売買契約書の印紙・印鑑・契印

1. 土地建物売買契約と印紙

土地建物の売買契約書を作成する際には、作成された契約書ごとに収入印紙を貼る必要があります。どのような書面に印紙を貼る必要があるのか、必要な印紙の額がいくらであるかは印紙税法という法律に定められています。具体的には印紙税法別表第1に記載されていますので参照してください。

収入印紙は土地建物売買契約書に貼るだけでは足りません。印紙が不正に再度使われることのないようにするため、貼り付け印紙に消印をすることが求められています。

注意すべきことは、印紙税法は、経済取引行為に対して課税するものではなく、あくまで作成される書面に対して課税されるものです。したがって、売買契約は1回限りでも、売買契約書を2通作成すれば、それぞれの契約書に同じ印紙を貼らなければなりません(収入印紙は2通分必要)。立会人にも売買契約書を保持させる趣旨で売買契約書を3通作成すれば、収入印紙も3通分必要となります。ただし押印する契約書は1通とし、相手方や立会いはコピーを保持するという場合には印紙は1通分のみで足ります。

なお、収入印紙を貼らなかったからといって、土地建物売買契約が無効になるわけではありません。しかし印紙を貼らなかった場合や消印を怠った場合には、契約書ごとに罰金又は科料に処せられることとされています。

不動産売買契約の印紙
  1. 貼付義務
  2. 消印義務
  3. 契約書ごとに義務がある

2. 土地建物売買契約と印鑑

土地建物売買契約書を作成する際には、売主と買主がそれぞれ署名し捺印するのが一般的です。よくみられる誤解ですが、欧米はサイン社会だから契約書はサインだけで効力を生ずるが、日本はハンコ社会だから契約書にはサインだけではなく押印しなければ契約の効力がないと考えている例を見受けます。しかし、土地建物売買契約は口頭でも成立する諾成契約(だくせいけいやく)ですから、押印がなくとも、当事者が土地建物を売り買いすることに合意したと判断されれば、売買契約は有効となります。したがって、土地建物売買契約書に署名していることが明らかであれば、原則として売買契約は成立しているものと判断されることになります。

したがって、契約書に押捺した印鑑が実印であるか、いわゆる認め印であるかによって契約の効力が変わるわけではありません。ただし、記名捺印の場合には、実印が押捺してあるということは、本人が記名捺印したことをより強く推定されるという意味で証明力に相違が出てくることはあり得ます。

土地建物売買契約書に
押捺する印鑑
  1. 署名のみでも契約は成立
  2. 実印・認め印は契約の有効性は同じ
  3. 実印・認め印は証明力に相違がある

3. 土地建物売買契約と契印

売買契約書が数枚により構成される場合には、いわゆる袋綴じの場合を除き、各ページの間に、売買契約書に押印したのと同じ印鑑を用いて印を押しますが、この印を「契印」といいます。契印を押すのは、売買契約書が数枚により構成される場合に表紙の1枚目にしか押印しない場合には、2枚目以降を別の内容の紙に差し替えられて紛争を生ずることがあり得るからです。

売買契約書が数枚により構成されている場合でも、いわゆる袋綴じにされている場合には、袋綴じの部分に、売買契約書に押印したのと同じ印鑑を用いて印を押せば目的は達するので、各ページの間に印鑑を押すことまでは行われていません。

土地建物売買契約書
の契印
  1. 複数枚の場合は必ず契印する
  2. 契約書と同じ印鑑で押捺する
弁護士
江口 正夫