建物の建築段階での土地・建物売買契約の締結

1. 未完成建物の売買契約の締結の可否

一般に、マイホームの取得は、(1)土地と建物の売買契約を締結する方法(いわゆる「建売り」)と、(2)敷地となる土地の売買契約とともに建物につき建築工事を発注する請負契約を締結する方法(いわゆる「売建て」・「建築条件付売買」)により行われています。

(1)の土地付き建物売買契約の場合、すでに完成した建物を土地とともに売買するのが典型的なものですが、いまだ建物が完成していない段階で売りに出され、売買契約を締結するという事例もあります。

このような場合、建物が、建物として完成していない段階であるにもかかわらず、建物としての売買契約の締結が可能なのかということが問題になります。そもそも、建物が存在していない段階で建物の売買契約の広告をすることは認められているのか、未完成建物の売買契約はいつから契約の締結が可能になるのか、ということを検討しておくことが必要です。

2. 宅地建物取引業法による規制

我が国の宅地建物取引業法は、建物が完成した後でなければ取引することができないとは定めていません。宅地建物取引業法においても、未完成建物も取引すること自体は可能とされているのです。

ただし、未完成建物の場合、完成建物と同様に自由に取引できるわけではありません。未完成物件の取引については、建物が実際に完成することができないような場合には購入者に不測の不利益を与えることになり、トラブルを生じかねませんので、(1)広告の時期の制限と、(2)契約締結時期の制限が課されているのです。

(1) 広告時期の制限

宅地建物取引業法33条は、「宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第29条第1項又は第2項の許可、建築基準法第6条第1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならない。」と定めています。要するに、未完成物件についての広告をすることのできる時期を建築確認がなされるなど、広告に係る物件が法規上も確実に存在し得る状態になった時期以降にしなければならないと定められています。

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(2) 売買契約締結時期の制限

同様に、同法36条では、「未完成物件の契約締結時期を都市計画法第29条第1項又は第2項の許可、建築基準法第6条第1項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければならない。」として、建築などが確実に行い得る状態になった時期以降とすることを定めています。

弁護士
江口 正夫