不動産取引における登記事項の確認

1. 不動産取引における権利関係の調査と登記事項

土地や建物の売買契約を締結する場合に、その所有者が誰であるか、抵当権が設定されていないか、といった事実を確認するための最も基本的な情報は登記記録(従来の登記簿)です。

登記記録は、表示に関する登記または権利に関する登記につき、1筆の土地または1個の建物ごとに作成されるもので、登記記録のうち、表示に関する登記が記録される表題部と、権利に関する登記が記録される権利部とに分かれています。

表題部には個々の土地や建物ごとに、その所在地や物理的状態(土地の場合には地目や地積等、建物の場合には構造、床面積等)が示されています。権利部には、甲区に所有権に関する事項として、所有権が過去に誰に帰属し、どのような経緯で現在の所有者に帰属することになったかという来歴が記載され、乙区には、所有権以外の権利に関する事項として、抵当権や地上権、賃借権等の権利が設定されているか、設定されている場合にはその内容等が記録されています。

2. 登記事項を確認する上での留意点

登記事項の確認のためには、登記記録に記載されている事項の全部または一部を証明した書面(登記事項証明書)の内容を確認することです。登記事項の全部を証明したものが登記事項全部証明書(従来の「登記簿謄本」に該当します)、一部を証明したものが登記事項一部証明書(従来の「登記簿抄本」に該当します)です。

権利関係の調査をするうえで最も重要なことは、自分の確認している書面が全部事項証明書であるのか、一部事項証明書であるのかをまず確認するということです。

例えば、登記事項証明書には抵当権の記載がない場合に、抵当権が設定されていないから登記事項証明書に記載されていないのか、それとも甲区までの一部事項証明書であって乙区についての登記事項の証明を求めていないから記載がないのかをきちんと認識することです。

この点は、証明書の末尾に記載されている登記官の証明文書を読むことにより、当該証明書が全部事項証明書か一部事項証明書かが分かります。

弁護士
江口 正夫