不動産売買契約と契約不適合責任免除特約

1. 不動産売買契約と契約不適合責任

住宅用の土地建物の売買契約を締結したときに、売買の目的である土地や建物が契約の趣旨に適合しない場合は、買主は、売主に対し、「目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完」を請求することができます(改正民法562条~564条)。

契約不適合とは、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ことをいいます。

2. 契約不適合責任免除特約

契約不適合責任は必ずしも絶対的なものではなく、当事者がこれを免除する特約も有効にすることができます(改正民法572条)。

ただし、契約不適合責任を免除する特約は常に有効であるとは限りません。法律は、契約不適合責任免除特約が無効となる場合を規定しています。

(1) 民法の規定による契約不適合責任免除特約の無効

1つには、改正民法572条の規定です。契約自由の原則により、当事者が契約不適合責任を免除することを合意した場合にそれを尊重すべきことは当然ですが、売主が契約不適合を知っていながらこれを告げずに売買契約を締結した場合のように、それが信義に反する場合には無効となります。

(2) 宅地建物取引業法の規定による瑕疵担保責任免除特約の無効

売買契約において、宅地建物取引業者が自ら売主となる場合には、当該宅地建物取引業者は、担保責任の期間を2年以上とする場合を除き、売主の瑕疵担保責任の規定を民法の規定よりも買主に不利な特約とすることは無効と定められています。

(3) 消費者契約法の規定による瑕疵担保責任免除特約の無効

事業者(法人その他の団体や事業のために契約する個人を含む)と消費者(個人であって非事業のために契約する者)との間の契約(消費者契約)の場合に、事業者の瑕疵担保責任を全部免除する特約は無効と定められています(消費者契約法8条1項5号)。

このように、土地付建物売買契約において、売主が瑕疵担保責任を負わないとする瑕疵担保責任免除特約がなされることは少なくないと思われますが、瑕疵担保責任を免除する特約は常に有効なわけではありません。例外としての無効事由に該当していないかを必ずチェックする必要があることに留意してください。

(4) 住宅の品質確保の促進等に関する法律による瑕疵担保責任期間

新築住宅を売買契約や請負契約により取得する場合、柱・はりなどの基本構造部分や雨水の侵入を防止する部分の重大な欠陥に関する瑕疵担保責任期間については、住宅の品質確保の促進等に関する法律により引渡しの日から10年間義務付けられており、買主に不利となる特約は無効と定められています(第95条)。

瑕疵担保責任免除特約 = 原則として有効

  • (1) 改正民法572条

    *売主が瑕疵を知って告げなかった場合、契約不適合責任免除特約は無効となる。

  • (2) 宅地建物取引業法40条

    *宅地建物取引業者が自ら売主となる場合には
    担保責任の期間を2年以上とする特約を除き民法の規定より買主に不利な特約は無効

  • (3) 消費者契約法8条1項5号

    *事業者の消費者に対する瑕疵担保責任全部免除特約は無効

  • (4) 住宅の品質確保の促進等に関する法律95条

    *住宅の品質確保の促進等に関する法律が適用される新築住宅の基本構造部分については、瑕疵担保責任の期間は10年間義務付けられており買主に不利な特約は無効

弁護士
江口 正夫