住宅の供給方式と契約類型

1. 住宅の供給方式

マイホームを購入する場合には、いわゆる建て売り分譲方式によって、業者により既に完成されている建物を購入する場合と、いわゆる注文建築で建築業者に建物の建築請負を発注して建物を取得する場合があります。

(1) 建て売り分譲方式

前者の建て売り分譲方式は、既に完成した建物を売却するものです。いわば「レディメイド」の完成した住宅を購入するのですから、その契約類型は「売買契約」ということになります。

(2) 注文建築方式

これに対し、後者の注文建築方式は、顧客の好みに応じた設計に基づき、いわば「オーダーメイド」の建物を建築していくものですから、その契約類型は住宅請負契約となります。住宅分譲方式の1つとして、業者が顧客に土地を売却するとともに買主から住宅建築の注文を受けるという、いわゆる「売り建て」方式というものがありますが、この方式は、顧客が業者に建物の建築工事を発注するものですから、契約の類型は「請負契約」ということになります。

(3) プレハブ住宅建築方式

「プレハブ」とは、あらかじめ製造するものをいいますが、プレハブ住宅とは、工場であらかじめ生産された建材や建築部品等の材料を現場で組み立てて建築される住宅をいいます。この方式は、住宅を規格化し、大量生産を可能とすることにより、住宅のコストダウンや建築工期の短縮等を目的として考えられたものです。プレハブ住宅の販売は、建て売り住宅のように、あらかじめ建物を完成させる必要はなく、完成住宅の見本を基に顧客に選択してもらい、顧客の選択に従って既に作成された建材等を現場で組み立てて住宅を完成させるというものですから、レディメイドの側面とオーダーメイドの側面も共に有するものとなっています。プレハブ契約は、現場で住宅を完成させるという側面からは、請負契約の類型であると言われますが、使用される建材や住宅の構造自体はあらかじめ定められたサンプルによるものですから、その本質は売買ではないかとの議論も存します。プレハブ方式は、建て売り分譲にも使用されますし、売り建て分譲にも使用されています。実務上は、建て売り分譲以外の場合は請負契約の形式がとられています。

2. 契約類型の相違の実際上の意義

売買契約か請負契約かの相違は、改正前の民法では、建物に欠陥(瑕疵)があった場合の瑕疵担保責任の内容に相違があったという点にありましたが、改正民法では、売買契約も請負契約も瑕疵担保責任から契約不適合責任に変わり、請負契約の契約不適合責任は売買契約の不適合責任を包括的に準用(改正民法559条)されています。その結果、改正前民法の請負契約における瑕疵担保に関する特有の規定である634条(修補に代えた損害賠償や過分の費用を要する場合には修補請求はできない等)及び第635条(建物その他土地の工作物については瑕疵担保を理由とする契約解除はできない等)並びに638条ないし640条(建物その他土地の工作物又は地盤の瑕疵は引渡後5年間、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物は10年間、担保責任の存続期間の延長や担保責任を負わない旨の特約等)はいずれも削除され、請負契約に特有の規定としては改正民法636条(請負人の担保責任の制限)及び637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)の2つの条文のみとなっています。

参考条文

【改正民法第636条】(請負人の担保責任の制限)

請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

【改正民法第637条】(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)

  1. 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
  2. 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。
弁護士
江口 正夫