地震保険制度がわが国に誕生する契機となったのは、1964年の新潟地震です。制度創設を訴えその実現に導いたのは、新潟出身で当時大蔵大臣だった田中角栄氏でした。
そもそも地震は、発生予測が困難なだけでなく、予測を超える深刻な広域災害となりうる災害です。故にその発生確率から保険料を算出する保険には、本来“なじまない”といわれます。
そこで地震保険は、法律(「地震保険法」)に基づき、損害保険会社と共に政府も保険金の支払責任を負う、官民一体の制度として運営され、他の保険とは異なる以下のような特徴や制限が設けられています。
まず、被災者の生活再建を支えるための制度なので、補償対象は居住用建物および生活用家財に限定されます。予測を超える巨大地震発生下でも確実に保険金が支払われるよう、契約できる保険金額には上限があり、火災保険金額の30~50%の範囲内で、建物は5,000万円まで、家財は1,000万円まで。いずれも火災保険とセットで契約します。保険期間は最長でも5年間です。
また、被災後の生活再建をいち早く進められるよう、保険金を迅速に支払う独特の仕組みもあります。建物の損害調査では、柱や屋根、壁や梁などの主要構造部の損害に着目して損害が判定され保険金が決まります。損害区分は「全損(契約金額の100%)」「大半損(60%)」「小半損(30%)」「一部損(5%)」の4つ。損害調査から平均数日で支払われ、受け取った保険金は使い道自由です。
保険料は都道府県および建物の構造により異なりますが、建物の耐震性能等により最大50%の保険料割引が適用されます。法律に基づき定められ、どの損保会社でも同条件なら保険料は同額です。また保険期間2年以上の保険料長期一括払は、期間に応じ保険料が割り引かれます。
被害発生リスクに比例して高くなる地震保険料は、被災リスクのまさに“モノサシ”ですが、では耐震等級の高い住宅なら地震保険が不要かというと、そうとも言えません。揺れで壊れなくても、地震火災で被害を受ける場合も。地震火災は火災保険の適用外で、地震保険のみで補償されることは意外に知られていません。