火災保険2 正しい火災保険金額の設定方法は?

「火災保険金額をいくらにするか」は、火災保険契約時の大切なポイントです。風水害や地震などの災害で数千万円レベルの被害が発生すれば、保険金の多寡により、被災後の生活に支障が出る可能性があるからです。
住宅取得手続では後回しにされがちな火災保険ですが、後にトラブルにならないよう、しっかり押さえておきましょう。

再築可能な新価で設定するのが現在の基本

火災保険契約時には、住宅の現在価値を図る「評価」が行われます。評価は現在、再調達価額で行われるのが一般的です。新価あるいは再取得価額とも呼ばれますが、住宅建物の所在地や建物の構造、部材や延べ床面積などから算出され、その額を保険金額とするのが基本です。保険金額を再調達価額で設定するのは、新築住宅のみならず中古住宅でも同様です。一般に中古住宅、ことに木造一戸建てについては、20年で建物価値がなくなるなどと言われています。そのため、不動産流通価格と同様、古い家なら保険金額も相応に低く設定するものでは、と考えている方が多いようですが、火災保険では、建物が古くても、もう一度その建物を再築できる金額を保険金額として設定することができます。

たとえば、2,000万円で取得した新築住宅でも、あるいは老朽化により劣化が進んだ中古住宅でも、現時点で再築するための金額が2,000万円であれば、いずれの保険金額も2,000万円となります。被災後も同等の住宅が再築可能となる保険金を受け取れることは、生活設計上も望ましいことといえます。

またそのためには、再調達価額の満額で保険金額を設定しておかなくてはなりません。建物の価値いっぱいに火災保険金額を設定していない場合、被災時に十分な保険金を受け取ることができないからです。

再調達価額に一定割合以上満たない保険金額(「一部保険」)であった場合、建物の一部にしか保険金をかけていないとみなされ、保険金が削減される「比例てん補」が行われることがあり、これでは損害の全額をカバーすることができません。

一方、評価額の満額以上の保険金額(「超過保険」)を設定していても、原則として超過分は保険金が支払われません。これは、失ったものの価値を超える保険金を受け取る、すなわち「焼け太り」となることを防ぐためです

実際に、火災保険金額が建物の再調達価額よりも相当に低かったために、被災後の生活再建に苦慮する、あるいは全損であっても保険証券に記載された保険金額以下しか受け取れないといったケースも見られますので注意が必要です。

このように正しい保険金額で契約することは大切ですが、同時に契約後も保険金額の定期的な見直しは欠かせません。保険金は原則として、被災時点の建物評価額をもとに支払われますが、住宅の建築費などが契約後に変化すれば、再調達価額も変化するからです。たとえば当初2,000万円で取得した住宅が、物価上昇に伴い建築費が上昇、被災時点で2,000万円を上回る再調達価額であった場合、受け取れる保険金に不足が生じる可能性が出てきます。

住宅ローンと同時に長期火災保険の契約をした多くの方は、火災保険に見直しが必要であるとは思ってもいないでしょう。被災したときに思ったように保険金を受け取れないと、大きなトラブルにもつながりかねませんので、社会・経済環境が変化することを前提に、契約後5年ごとぐらいに、保険金額の見直しをするとよいでしょう。

※一部の保険会社の取り扱う火災保険では、一定割合までの超過保険や一部保険でも契約が可能なものや、契約時の評価額で保険金が支払われるものもある

以前に契約した長期火災保険は注意

「再調達価額」に対し、「時価額」で建物を評価する方法もあり、こちらは時間の経過とともに進む建物の老朽化を加味した評価額となります。つまり時価額では、建物が古くなるほど評価額が再調達価額よりも低くなるわけですから、保険金だけで失った建物と同等のものを再築することは難しくなります。

さらに、時間の経過により設定している保険金額と実態である時価額との差が大きくなれば、契約当初は正しい契約でも次第に保険金額より実態としての時価のほうが低い状態、つまり「超過保険」となってしまいます。たとえば、契約当初の正しい保険金額が2,000万円でも、被災時の建物時価額が1,500万円であれば、支払われる保険金の上限は1,500万円です。被災時に契約どおりの保険金を受け取ることができないことは、多くの方にとって理解し難いことではないでしょうか。

時価額ベースで新たな契約を結ぶことは現在ではあまりありませんが、以前に住宅ローンに併せて契約した長期火災保険にはこうした契約も現存しています。再調達価額をベースとした新たな保険に入り直すのも1つの対応方法ですが、その場合、解約する既存契約の未経過期間分の保険料は契約者に返戻されます。

なお、以前の契約でも、旧住宅金融公庫融資で契約した特約火災保険は別。契約時は時価額ベースであった場合も、平成24年7月1日より「個人新価保険特約」が全契約者に原則付帯されており、再調達価額ベースで保険金が支払われる仕組みに修正されているからです。

ただし、将来の物価変動により再調達価額が変化することもあるので、他の火災保険同様、保険金額の見直しは必要です。特約火災保険の手続は、「住宅金融支援機構特約火災保険ご契約のお客様専用窓口」。こちらで問い合わせや手続ができます。

新築時の値段は、物価が上昇すれば再築金額は上がり、物価が下落すれば再築金額は減る。最近は概ね「再調達価額」で契約することが多い。ただし時間の経過・物価変動とともに、適切な火災保険金額は変化するので、定期的な見直しを!
ファイナンシャルプランナー
清水 香