住宅用の土地建物の売買契約を締結した後に、売買の目的物の1つである建物が、売主業者側の過失により焼失した場合にどうなるかを確認しておきます。この場合は、いわゆる「危険負担」の問題ではありません。
危険負担とは、債務者の責に帰すことのできない事由によって滅失し、または毀損した場合に、その滅失または毀損の危険を、売主、買主のいずれが負担するかという問題です。例えば、売買契約締結後に震度7程度の大規模地震により建物が滅失した場合、売主の建物所有権移転債務は、債務者である売主の責に帰すことのできない事由による履行不能により消滅しますが、その反対債権である買主の売買代金支払債務が消滅するか否か、という問題が危険負担の問題です。ちなみに、改正民法536条では、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、買主は代金の支払いを拒むことができるものとして、履行拒絶権を認めています。
これに対して、売主側の過失で建物が滅失したという場合は、危険負担の場合のように「債務者の責に帰すことのできない事由によって滅失」した場合に当たらず、「債務者の責に帰すべき事由により滅失」した場合です。これは、債務者の責に帰すべき履行不能ですから、債務不履行の一場合となります。