住宅ローンシミュレーション活用方法

住宅ローン比較はシミュレーターを利用すると効果的

相談者運よく気に入った物件がみつかったので、住宅ローンをどこで借りるか検討しています。できるだけ返済の負担を少なくしたいのですが、どのように選んだらよいのでしょうか?

回答者どのくらいの期間でどのように返したいですか?

相談者3,600万円くらいを35年間で借りようと思っています。最近、金利が低いとはいえ、将来の金利上昇も気になるんですよね。金利タイプもフラット35を選ぶべきか、少しでも低い変動金利型がいいか、どう選んだらよいのでしょうか?

回答者そうですね。では、将来の金利上昇パターンを想定してそれぞれの金利タイプを比較できるよう、シミュレーションしてみましょうか。

相談者はい、お願いします。自分ではどのように比較したらいいのかわからず……。

回答者シミュレーターにもいろいろあって、1種類のローンしか入力できなかったり、将来の金利予測が1回だけしか入れられないものもあります。Kさんの場合は、将来の金利上昇をより具体的にイメージして複数の金利タイプを比較できるよう、住宅金融支援機構の「返済プラン比較シミュレーション」を使ってみましょう。

相談者住宅金融支援機構のホームページで無料で利用できるんですね。

回答者3つのローン商品まで比較ができ、違いも一目で把握できるので、個々に計算するよりわかりやすいと思いますよ。変動金利型と全期間固定型のフラット35、そして2つの金利タイプの間をとった10年固定タイプを同時に比較して、金利タイプの違いをみてみましょう。

複数の金利タイプ比較は、将来の金利変動の前提を揃えることが大切!

相談者変動金利型の金利は、どう見込めばよいのでしょうか。さすがにこの先、今よりは上がってくると思うのですが……。

回答者将来の金利を確実に予測することは難しいのですが、将来の金利推移は、過去30年間の店頭金利が平均4%弱だったことをもとに考えましょうか。実際には、そこから1.7%程度の引下げ幅を反映して適用金利が決まってくるので、将来的には2%台になる可能性もあるでしょう。住宅金融支援機構のシミュレーターだと4段階まで金利情報を入力できるので、今後5年ごとに0.5%ずつ上昇するイメージでいかがですか?

相談者なるほど。そのくらいなら現実的ですね。

回答者まずプラン1で変動金利型を、プラン2では10年固定タイプ、プラン3ではフラット35を入力してみますね(入力画面 ①-1参照)。

相談者10年固定の11年目以降の金利は、どう見込めばよいのでしょうか。

回答者10年固定タイプの固定期間終了後は、変動金利型や他の金利タイプを選べ、引下げ幅も銀行や商品によってさまざまです。異なる金利タイプの特徴をみるために、ここでは11年目以降、変動金利型で試算し、金利前提条件も同じにしてみましょう。

相談者なるほど、10年固定も、変動金利型の予測と同じ金利上昇があると想定して比較するんですね。

回答者はい。他の5年固定などの固定金利選択型でも、同様に試算することができます。その他諸費用として、手数料などは実際の住宅ローンの商品内容をホームページで確認して具体的な数値を入力していきます。プラン1、プラン2とも保証料はかかりますが、事務手数料が定額の3.24万円のところ、プラン3のフラット35は、保証料は不要です。それでも事務手数料はさまざまなので、比較的低い借入額の0.8%のところを採用してみます。

相談者当初5年間の毎月の返済額は変動金利型が一番少ないけれど、それ以降は他の金利タイプのほうが少ない場合があるんですね。グラフをみると返済期間後半のイメージなどもわかりやすいですね(試算結果 ①-2、グラフ ①-3参照)。異なる金利タイプを並べてみることができたので、その違いも踏まえて、自分の将来の家計で返済しやすいものを選びたいと思います。あとは同じ金利タイプでも、金利や手数料だけでなく返済期間によっても総返済額に違いが出てきますよね。今回、入力画面を一緒に見せていただいてとてもよくわかりました。

回答者それはよかったです。金利タイプを決めないまま、個々の商品を指定して比較していくと、比較ポイントが多すぎて混乱しがちですが、最初に各金利タイプの代表的な商品を比較して金利タイプを絞り込むと、スムーズに選ぶことができます。次は、実際のKさんの返済余裕度に合わせて、返済期間を変えていくプランも見てみましょう。返済期間中の安心感が変わってくると思いますよ。

実際のシミュレーション画面

入力画面 ①-1

宅金融支援機構「返済プラン比較シミュレーション」入力フォームの一部

試算結果 ①-2

「試算結果」画面

グラフ ①-3

総支払額の推移と年間支払額の推移を表したグラフ

より早く完済するのに必要な繰上返済額を手っ取り早く知るには

相談者前回は3,600万円を35年契約で金利タイプごとにシミュレーションをしてもらいました。でも、35年返済では完済時の年齢が75歳。さすがに老後の生活を考えると不安もあるので、いくらか前倒しで返済を考えています。

回答者住宅ローンは契約後の返済期間延長がそう簡単なことではないので、まず借りる権利を得る意味から35年で組むのは賢明といえます。しかし、実際は退職時までなど、契約した返済期間より短く完済したいと思う人も多いでしょう。期間を短縮するなら繰上返済が考えられますが、何年くらいで返したいですか?

相談者できれば25年くらいを考えています。それなら年金生活が始まる65歳までに終わりそうなので。でも、10年も期間を短くするのに、いったいどれくらい繰上返済していけばいいのでしょうか?

回答者繰上返済に必要な額を知りたいのですね。目標完済時期に合わせて期間を25年で試算し(画面 ②-1)、当初の35年の返済内容とどのくらい差が出るか見てみると、簡単に目安を知ることができますよ。

相談者なるほど! 期間25年でも試算してみるんですね

回答者もちろん総返済額は、25年返済のほうが35年返済より少なくなりますが、繰上返済に必要な目安を知りたいときは、期間短縮前後の返済額の差額を見る方法もあります。3つの金利タイプを比較したいときは、一度に試算することができます。

相談者結構簡単にわかるのですね。

回答者シミュレーターがあると便利ですね。では35年返済と金利・諸費用をそろえた上で25年返済と比較をしてみましょう。シミュレーターでは、タイプ1(変動金利)とタイプ2(10年固定)、タイプ3(フラット35)の毎月返済額が出てきますが、どれも35年返済との差額をひと月当たりに直すと3.4万円前後というところですね。35年返済でも、毎月の差額分を貯めておいて定期的に繰上返済にまわすとおおよそ25年以内で完済できるといえます。

相談者つまり、毎月3.4万円分を繰上返済用にキープしておけばいいということですね。どの金利タイプを選ぶといいでしょうか?

各金利タイプごとの繰上返済プランで検証する

回答者まず、各金利タイプごとに繰上返済のページ(画面 ②-2)を出して検証してみましょう。先ほどの目安として毎年41万円ずつ繰上返済すると入力すると、返済期間は25年以内になりますね。

相談者ほんとうですね。フラット35はどうやって試算すればいいですか? 繰上返済は100万円以上からと聞いたことがあるのですが……。

回答者フラット35は「住・My Note」というインターネットサービスを利用することで、実際には10万円以上から繰上返済が可能になっています。この試算でも「住・My Note」の欄をチェックすることで、10万円以上の金額を設定して試算できますよ。

相談者なるほど。10万円からできるなら、問題ないですね。

回答者では、3つの金利タイプの総返済額の相違をまとめてみましょう(表1参照)。期間を10年程度短くできると、結果的に総返済額も400万円~500万円軽減できることがわかりますね。前回同様に、将来の金利上昇を5年ごとに0.5%程度の上昇幅で加味してみた際、最後の10年間における高めの金利に相当する期間が短縮されるため、10年固定の総返済額の軽減効果が目立つようです。フラット35は全期間固定金利なので、総返済額を他の金利タイプと単純に比較するのは難しいですが、大事なのは無理のない返済プランですね。

相談者なるほど。40歳から返済をスタートして、途中で金利の上昇に慌ててしまうのは避けたいですしね。我が家は、今小学生の一人娘の学費も気になるので、どうしたらいいでしょうか?

回答者今後10年以内に教育費の増加など家計の負担が膨らむことが予想されるのなら、その間は金利変動リスクを避けられるよう、教育費のピークを過ぎるまでは金利が固定されるタイプを選ぶメリットもあると思いますよ。

相談者そうですね。こうしてみると、最初は35年で契約しても、在職期間に完済できるように繰上返済のペースも見えて、より着実に安心できる住宅ローンを選ぶことができそうです。具体的にシミュレーションで比較できるのがいいですね。

回答者はい。今回、金利タイプや返済期間を変えたシミュレーションで、毎月の返済と期間短縮のための準備額について具体的にイメージできて良かったです。今後の生活の変化に合わせて対応できるようにご家庭でも再確認してみてくださいね。

実際のシミュレーション画面

画面 ②-1

繰り上げ返済に関する入力フォーム画面

画面 ②-2

「試算結果」画面

表1 返済期間の違いによる金利タイプ別総返済額

金利タイプ 35年   25年にすると
変動(当初0.775% 4,844万円   4,341万円
10年固定(当初1.2% 4,913万円   4,407万円
フラット35(1.58%) 4,969万円   4,564万円

※5年ごとに適用金利が0.5%上昇、2.775%を上限と仮定。
総返済額は諸費用も含めて、シミュレーターから転記(繰上返済による保証料戻りは考慮せず)