住宅ローン選択時における繰上げ返済の注意点とは?

ご質問

30代後半の専業主婦です。40歳になる夫と4歳の子どもとの3人家族です。
住宅購入に向けて動き始めました。現段階で住宅購入の決定には至っていませんが、子どもが小学校に入学するまでには住宅購入を決定したいと考えています。
ただし、物価の上昇や金利の上昇等も考えると、できるだけ住宅ローンの返済負担は抑えたいと考えています。そのためには、繰上げ返済を積極的にしていきたいと考えていますが、夫はあまり積極的ではありません。
繰上げ返済しやすい住宅ローンのほうが安心感があるため、住宅ローンを選ぶ段階での繰上げ返済に関する注意点について、アドバイスをいただけませんでしょうか?

回答

「短く、少なく、低金利」のローンは負担が軽くなる

毎月返済額を少なく抑えるために、返済期間を長く設定する傾向がありますが、総返済額は多くなってしまいます。住宅ローンの返済負担は「長く、多く、高金利」で借りると重くなり、「短く、少なく、低金利」で借りると軽くなります。
現在は、歴史的に見てもかなりの低金利局面であるため、現在の金利水準で住宅ローンを借りた後に、さらに借り換えて住宅ローンの金利負担を少なくすることは難しいと考えられます。そのため、借入後は「少しでも借入額を減らす」または「返済期間を短くする」ことが重要かつ効果的です。
住宅ローンの繰上げ返済は、通常の返済とは別に、元本の全部または一部を返済することをいい、借入残高が減るため、金利負担も軽減されます。

繰上げ返済のしやすさを判断する4つの着眼点

住宅ローンの返済では、先述したとおり金利に目が行きがちですが、繰上げ返済のしやすさも大きなポイントです。実際に、住宅ローンに関するアンケート調査の結果を見ても、住宅ローンを選ぶときに決め手になったポイントは、「金利の魅力」に次いで「繰上げ返済のしやすさ」と回答する人が多くなっています。

繰上げ返済のしやすさを判断する4つのポイントがあります。

1. 繰上げ返済手数料

以前は繰上げ返済をするたびに、数千円、数万円の手数料がかかるケースが一般的でしたが、最近は繰上げ返済手数料がかからない住宅ローンも多く、「店頭で手続きすると数千円から数万円の手数料がかかりますが、インターネットで手続きすると手数料が無料となる」金融機関もあります。こまめに繰上げ返済をすることで、金利負担を軽減したいと考えるならば、繰上げ返済手数料が高いと効果が薄まってしまいますので、手数料がかからないまたは少額である住宅ローンを選ぶとよいでしょう。

2. 繰上げ返済額(内入れ額)

1円から内入れできる、1万円から内入れできるなど、少額から内入れできる住宅ローンのほうが繰上げ返済しやすいといえます。繰上げ返済は、早く実行するほど金利軽減効果が大きいため、まとまったお金が貯まるまで待つより、こまめに繰上げ返済をしたほうが効果は高くなります。

3. 手続き時期

繰上げ返済する日の1か月以上前に申し出なければならない住宅ローンもありますし、1週間前までに手続きをすればよい、○営業日前までに手続きをしなければならない、手続き直後に住宅ローンを繰上げ返済できるなど、様々なタイプがあります。この点についても手続き直後に繰上げ返済できると、機動力が高い点で、繰上げ返済しやすいといえるでしょう。

4. 手続き方法

店頭での手続きのみ、書類送付が必要(来店不要)、インターネットでも手続きできる等、様々なタイプがあります。この点でも、インターネットで手続きできると、忙しい人でも手軽に繰上げ返済ができる点でメリットがあります。

全ての条件を満たす住宅ローンでなくても、自分にとって大切な条件を満たす住宅ローンを選ばれてはいかがでしょうか。

繰上げ返済も大切ですが、生活資金やライフイベント資金の確保も大切

住宅ローンの繰上げ返済をすると、金利負担を軽減できますし、金利は一見ムダなコストですので、負担を軽くしたいと考えるのはごもっともです。ただし、少なくとも数か月分の生活資金や、近い将来(概ね5年以内)に予定されるライフイベント資金を手元に残しておくことも大切です。金利負担はムダなコストであると考え、数か月分の生活資金やライフイベント資金まで繰上げ返済に充ててしまうと生活の安定感は崩れてしまいます。特に今後、進学を控えたお子様もいらっしゃいますから、ある程度のお金を手元に残す安心感を得るための安心料として、金利を支払うということにも意味があると考えられます。

ご主人が繰上げ返済に対してあまり積極的ではないというのは、この点を考慮してのことかもしれませんね。また、今後、物価が継続的に上昇するとすれば、固定金利で借りた住宅ローンは毎月返済額が増えない点で、繰上げ返済せずに、手元にお金を残す安心感はより重要になると考えられます。

景気、物価、金利の先行きはなかなか読めません。したがって、先述した点を踏まえたうえで繰上げ返済をしやすい住宅ローンを選び、住宅ローンの返済は家計状況、物価や金利の動向等を考慮しながらその都度、ご判断されることが適切と考えます。

ファイナンシャルプランナー 益山 真一