住宅ローンの返済額と教育資金積立額について

ご質問

私は34歳の会社員(男性)で、妻(会社員・32歳)と子ども(1歳)の3人家族です。マイホームの取得を計画していて、引き上げ前に住宅を購入しようと、住宅展示場やマンションギャラリーに足を運んでいます。具体的には4,000万円程度(諸費用込)の予算で、頭金600万円程度、残りの3,400万円程度を住宅ローンで手当てしようと考えています。
また、子どもの成長に伴う教育資金も計画的に準備したいと考えています。その場合、私にとって適切な毎月返済額と毎月の教育資金積立額についてアドバイスをお願いします。

【収入の概要】

(私)
額面年収:500万円
毎月の給与:30万円×12
賞与(年2回):70万円×2
(妻)
額面年収:400万円
毎月の給与:25万円×12
賞与(年2回):50万円×2

【その他の情報】

  • 子どもは1人のままで、進学プランは特に考えていない(自宅から通学可能を前提)
  • ボーナスは比較的安定的に支給されている
  • 妻も私もこのまま定年まで働き続けたいと考えている
  • 預貯金:私 800万円 妻 400万円

回答

返済可能額は額面年収ではなく、可処分所得をもとに検討

マイホームを取得しようとお考えで、色々な物件をみて、徐々にお考えも固まりつつあるのではないでしょうか。
長期にわたる住宅ローンについては、借りられるか否かも重要ですが、「いくらなら返済できるか、また余裕を持って返済できるか」についても気になりますよね。
多くの場合、額面年収に対していくらまでであれば返済できるか、と考えますが、できれば、可処分所得(自由に使える収入)をもとに考えましょう。
可処分所得は、「額面年収-(所得税+住民税+社会保険料)」により求められます。社会保険には、厚生年金・国民年金、健康保険・国民健康保険、介護保険、雇用保険等があり、会社員の場合、額面年収の概ね15%程度の保険料が徴収されます。
さらに、所得税・住民税が徴収されるため、可処分所得は額面年収の概ね80%程度と考えてください。なお、今後は、年金・医療・介護等、社会保険料の引き上げが予想されるため、可処分所得はさらに減少していくと予想されます。

年収の40%=可処分所得の50%

年収に対する年間返済限度額は金融機関ごとに異なります。ただし、ご自分で返済可能額を考える場合、「額面年収」ではなく「可処分所得」をもとに検討しましょう。 例えば、「年収の40%を返済する」ということは「可処分所得の50%を返済に充てる(80%×50%=40%)」ということです。決して楽ではありません。

年間返済額の
額面年収に対する割合
年間返済額の
可処分所得に対する割合
20% 25%(20÷80)
25% 31.25%(25÷80)
30% 37.50%(30÷80)
35% 43.75%(35÷80)
40% 50%(40÷80)

可処分所得を額面年収の80%とする

年収500万円(可処分所得400万円、妻の収入は除く)のお客様の場合、金利1.5%、返済期間35年、年間返済負担率25%(年間125万円、月額10.4万円)で計算すると、借入可能額は3,400万円であり、資金計画とほぼ一致します。
しかし、可処分所得に対する返済負担率は31.25%。仮に奥様の収入が期待できない場合、今後の教育資金を考えると、ギリギリ返済できるラインといえます。
言い換えると、奥様(可処分所得320万円)が今後も働き続ける前提であれば、合計の可処分所得720万円に対する返済負担率は17.4%であり、十分に余裕をもって返済できます。

ボーナス返済を利用する場合はできるだけ少額が基本

年間返済額の判定について、ボーナス分は、安定的に見込むことができるか否かで異なります。比較的安定的にボーナスを見込むことができる大企業でも、景気悪化、業績不振、不祥事によりボーナスが減少したり、ゼロになったりすることも考えられますし、特に業績(または個人業績)連動型の場合、変動幅が大きく、見込みと大きく変わってしまう可能性があります。
住宅購入は人生の大きなイベントであり、失敗は許されませんので、借入可能額は、毎月の収入で返済できる範囲で検討することが基本です。
お客様の場合、ご主人の収入のみで判定すると、毎月の収入は30万円(可処分所得24万円)ですので、毎月返済額10.4万円は可処分所得の43%となり、かなり厳しい資金計画です。
ただし、ヒアリングしたところ、ボーナスが安定的に支給されており、奥様も今後働き続けたいとのことですので、「ご主人が毎月返済額10.4万円を返済する(生活費、教育資金は夫の収入の残りと妻の収入で手当て)」または「毎月返済分2,500万円、ボーナス月返済分900万円として、毎月返済額7.7万円、ボーナス月返済額24.2万円(ボーナス月のみ、通常返済月よりも約16.5万円アップ)とする」など、ボーナスが大きく減少しても、返済が滞らない程度にボーナス返済を利用することも1つの方法です。

教育資金を踏まえた資金計画を

住宅ローンの返済は長期にわたりますが、今後、お子様の教育資金がかかる場合には、教育資金も長期にわたる固定費となるため、住宅ローン、固定資産税、管理費等を含めた住居費と教育資金を踏まえた資金計画が重要となります。
特に、教育資金はお子様が成長するにつれてより多くの金額が必要となる一方、教育資金の負担が増える時期に急激に収入が増えるわけではありませんので、コツコツと積み立てる等、計画的な資金の準備が必要です。
現在のところ、進学プランは何も考えていないとのことですので、まずは教育資金の手当てをする収入源を考えておきましょう。たとえば、高校までの学費は奥様の毎月の収入で手当てし、大学進学資金はご主人のボーナスまたは奥様のボーナスから計画的に積み立てるようなプランはいかがでしょうか。
具体的には、幼稚園から高校まで公立に通う場合、15年間の教育費の合計は約540万円ですので、毎月平均3万円。幼稚園・高校は私立、小学校・中学校は公立に通う場合、15年間の教育費の合計は約792万円、毎月平均4.4万円となります(文部科学省 平成28年度「子供の学習費調査」をもとに試算)。
住宅ローンを毎月返済のみとした場合、毎月返済額と教育費の合計額は、高校まで公立の場合、13.4万円(10.4万円+3万円)、幼稚園・高校は私立、小学校・中学校は公立の場合、14.8万円(10.4万円+4.4万円)。この固定費が大きく感じられるようでしたら、「頭金をより多くしてローン返済を少なくする」「住宅ローンについてボーナス返済を活用する」ことをご検討してはいかがでしょうか?
また、私立大学文系の入学費用と在学費用(4年間)の平均値は695.1万円(日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(平成28年度))。
この費用をゼロから全額準備する場合、お子様が18歳に達するまでの17年間、毎年41万円の積み立てが必要ですので、ボーナス1回につき20.5万円の積み立てとなります。全額の手当てが難しいようであれば、「住宅購入後の預貯金の一部(例:200万円)を大学進学資金向けの貯蓄に組み入れる」「入学費用(95.9万円)と1年次の学費(149.9万円)のみ準備する」というプランもよいでしょう。

2019年10月から消費税率が10%に引き上げられ、医療・介護等を中心とする社会保険料の負担増により可処分所得の減少が予想されます。そのような中で、より確実に住宅ローンを返済するためには、額面年収ではなく、可処分所得をもとにした資金計画を立てることが重要です。
是非、可処分所得をもとにした住宅購入後の家計のやり繰りをご夫婦で話し合い、今後のライフプランの実現に役立てていただきたいと思います。

ファイナンシャルプランナー 益山 真一