ご質問
私は40歳の会社員です。40歳の妻(会社員)、10歳の子(小学生)の3人家族です。
現在、住宅ローンを返済中で、より金利が下がったこともあり、借換えを検討しています。
妻から、「今の住宅ローンの団体信用生命保険(以下、団信)は死亡・高度障害のみの保障しかないけど、もし、借り換えるのであれば、金利が下がった分、ガン特約や3大疾病特約付の団信を検討してみたら」と提案を受けました。
考えてみれば、同年代の友人が、人間ドックや健康診断で、ガンや脳梗塞の疑いありと診断された話をよく耳にするようになりました。幸いなことに、私は今まで人間ドックなどで「要精密検査」との診断を受けたことはなく、加入できる可能性は高いと思いますので、費用負担との兼ね合いで検討したいと思います。
疾病特約付団信の保障内容や保険料の水準、加入を検討するときの注意点についてアドバイスをお願いします。
現在返済中の住宅ローン
- 借入先:
- 民間大手銀行
- 返済期間:
- 35年(5年経過)
- 借入額:
- 3,330万円
- 金利:
- 2.25%
- 金利タイプ:
- 10年固定金利期間選択型
- 毎月返済額:
- 114,631円
- ローン残高:
- 3,000万円(60回返済時点)
回答
日本銀行のマイナス金利政策により現在は金利水準も下がり、年利0.5%を下回る変動金利型住宅ローン、年利1%を下回る10年固定金利選択型住宅ローン等も登場しました。
言うまでもなく、住宅ローンは長期にわたる家計の固定費となるため、少なく抑えたいものですが、それも安定的な収入、返済財源があることが前提です。
債務者が返済中に死亡・高度障害となった場合、団信に加入していれば、債務残高は保険金で金融機関に返済されるため、遺族は返済せずに済みますが、通常の団信では、病気や要介護状態となったために返済できなくなった場合の保障はありません。
会社員等が病気やケガ等により働くことができない場合、業務災害等では労働者災害補償保険から休業補償給付を受けられ、私傷病等では健康保険から傷病手当金が支給されますが、自営業者等が加入する国民健康保険ではこれらの給付もありません。
病気等により働くことができなくなり、安定的な収入を失った場合の備えとして、「疾病特約付団信」はその解決方法の1つとなり得ます。
以下で、疾病特約付団信の商品性の概要を解説します。
なお、金融機関(保険商品)により、加入年齢、保障額、補償内容、保険料等の条件が異なりますので、比較検討する際には注意が必要です。
1. ガン特約付
契約から3カ月経過後(責任開始日以降)に、ガン(上皮内ガンや皮膚の悪性黒色腫以外の皮膚ガンを除く)と診断確定された場合に、保険金が支払われます。
金利換算すると、0.05%から0.2%程度の負担となります。
2. 3大疾病特約付
ガンと診断された場合は、ガン特約付と同じ保障となりますが、急性心筋梗塞は「発病し、初めて医師の診療を受けた日から60日以上、労働の制限を必要とする状態が継続したと医師によって診断されること」、脳卒中は、「発病し、初めて医師の診療を受けた日から60日以上、言語障害や運動失調、麻痺等の神経学的後遺症が継続したと医師によって診断されること」を条件に保険金が支払われます。つまり、ガンとは異なり、発病すれば保険金が支払われるわけではなく、「60日ルール」が適用されることに注意が必要です。
また、ガンの保障は3カ月免責となる点はガン特約付と同じですが、急性心筋梗塞や脳卒中の保障は3カ月免責が「あるタイプ」と「ないタイプ」があります。
金利換算すると、0.2%から0.3%程度の負担となります。
なお、平成27年10月1日以降、住宅金融支援機構が扱う3大疾病保障付機構団信の急性心筋梗塞または脳卒中の支払事由にそれぞれ以下の事項が追加されました。
- 急性心筋梗塞を発病し、その急性心筋梗塞の治療を直接の目的として、病院または診療所において手術を受けたとき
- 脳卒中を発病し、その脳卒中の治療を直接の目的として、病院または診療所において手術を受けたとき
つまり、60日経過前でも、平成27年10月1日以後に上記の手術を受けた場合には保障されるようになりました。この改正は民間金融機関の住宅ローンに付保する団信にも適用されている場合があります。
3. 7大疾病、8大疾病特約付
3大疾病に加えて、糖尿病、慢性腎不全、高血圧性疾患、肝硬変(8大疾病では慢性膵炎を含む)となった場合に保障されます。
保障内容は大きく以下の2つのタイプに分けられます。
- タイプ1:
- 3大疾病は全額保障、その他は当初1年間は毎月保障し、13カ月以上継続すると全額保障
- タイプ2:
- 3大疾病を含め、当初1年間は毎月保障し、13カ月以上継続すると全額保障
金利換算すると0.3%から0.4%程度の負担となります。
中には、債務残高、返済額、性別、年齢に応じて保険料を定期的に算出するタイプや、保険料が金利に含まれるタイプもあります。
4. 要介護特約付
公的介護保険における要介護認定(例:要介護2、要介護3等)を受け、所定の要介護状態に該当した日から起算して、その状態が180日以上継続していることを医師によって診断確定されると保険金が支払われます。
金利負担は各金融機関が扱う団信の要介護状態のレベルによって異なり、保険料が金利に含まれるタイプもあります。
アドバイスと注意点
お客様の債務残高は3,000万円、残返済期間は30年ですので、借入額3,000万円、返済期間30年を前提として、
- フラット35(1.69%、3大疾病特約付機構団信)
- 民間変動金利型(0.6%、ガン特約0.1%負担、3大疾病特約0.2%負担)
- 民間10年固定金利期間選択型(1.15%、ガン特約0.1%負担、3大疾病特約0.2%負担)
の3パターンの借換えにつき、借換え前の毎月返済額との比較、疾病特約の団信保険料を以下の表にまとめました。
毎月返済額 ( )内は借換え前との差額 |
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---|---|
現在 10年固定 2.25% 5年経過 |
通常団信 114,631円 |
フラット35 1.69% 3大疾病特約付機構団信 |
106,293円(▲8,338円) |
民間金融機関 変動金利型 0.6% ガン特約付 金利0.1%上乗せ 3大疾病特約付金利0.2%上乗せ |
ガン特約付団信 92,413円(▲22,218円) |
3大疾病特約付団信 93,760円(▲20,871円) |
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民間金融機関 10年固定金利期間選択型 1.15% ガン特約付 金利0.1%上乗せ 3大疾病特約付金利0.2%上乗せ |
ガン特約付団信 99,975円(▲14,656円) |
3大疾病特約付団信 101,390円(▲13,241円) |
※変動金利型の金利変動、10年固定金利期間選択型の固定金利期間終了後の金利変動は考慮しない。
アドバイスのまとめ
上記試算結果によれば、現在と借換え後の金利差が、変動金利では1.65%、10年固定金利期間選択型では1.1%の差があるため、ガン特約付、3大疾病特約付の団信に加入しても、毎月の返済額(負担額)は現在よりも少なくなり、ガンや3大疾病となった場合の返済リスクに備えることができますので、疾病特約付団信の加入について、前向きに検討なさってもよいのではないでしょうか?
また、借換え後の団信加入手続きについては、改めて告知義務が求められることについても注意が必要です。
40代を迎え、さらにお子様の成長に伴い、お客様の疾病による経済的リスクは、住宅ローンのみではなく、教育資金にも及びます。住宅ローンに疾病特約付団信を付保することも備えの1つですが、3大疾病の原因とされる6つの生活習慣(食事、睡眠、運動、喫煙、お酒、ストレス)のリスクを小さくすることも重要です。
借り換えて返済負担を抑え、疾病時の返済リスクに備えるだけでも大きな安心ですが、健康診断を定期的に受けて、疾病リスクを早期発見して、生活の安心度を高めていきましょう。
ファイナンシャルプランナー 益山 真一