ご質問
夫婦と子どもの3人家族です。住宅ローンの返済期間について悩んでいます。
可能な限り短い期間を選択すべきなのでしょうか?それとも、繰上げ返済を前提に最長期間を選択すべきなのでしょうか?
私たち夫婦の意見が合わないことをみても、借入者の条件等にもよるのでしょうが、どちらの考え方を基本にすべきでしょうか?
回答
おやおや、大変ですね。しかし、どの家庭も住宅ローン返済1つをとっても考え方が全く同じということはあまりありません。強いて言えば、損得勘定を優先して考えるよりも、その家庭における状況やお金の管理方法に適した住宅ローンを組むことが最も大切であると考えます。その状況や管理方法を把握するために、いくつかヒントを提供させていただきます。
1. 職業
サラリーマンで安定収入が見込め、他の条件も許すならば、返済期間を短く設定してもよいと思います。しかし、自営業や収入が不安定な歩合給である場合は、収入の浮き沈みも考慮しながら返済期間を長めに設定し、余裕ができれば繰上げ返済等により返済期間を短くしたり、繰上げ返済はせずに事業用運転資金の確保を優先したりすることをお勧めします。
2. 定年までの収入・期間
比較的中高齢になってから住宅を購入する場合、定年までの期間が短いために返済期間を短く設定したほうがよいのでは、と考えることはごく自然なことです。
理想を言えば、定年年齢から逆算した返済期間で住宅ローンを組んで返済できるようでしたら、それがベストです。しかし、教育費の負担が重いなどの理由により、返済期間を短く設定するとムリが生じるようでしたら、返済期間を長く設定して住宅ローンを組み、余裕ができたら繰上げ返済をする、または、繰上げ返済できる資金を「老後資金準備」として運用する、という方法が望ましいといえます。
また、返済期間は長く設定したまま元金均等返済を利用して金利負担を軽減するのも1つの方法です。
3. ボーナス
ボーナスが安定してもらえる見込みがあれば、ボーナス返済を利用して返済期間を短くすると金利負担を抑えることができます。ただし、景気の変動により公務員や超一流企業でも将来は分かりませんので、ボーナス返済はムリがない範囲、具体的にはボーナスが2~3年間なしでも、貯蓄でボーナス返済分を支払うことができるくらいに抑えておきましょう。
4. 貯蓄習慣
今まで計画的に貯蓄できた家庭であれば、繰上げ返済も計画的に実行できると思われます。おそらく繰上げ返済により金利負担が軽くなることを楽しめるでしょうから、長い返済期間で住宅ローンを組んでも大丈夫でしょう。
一方、計画的な貯蓄が苦手で浪費癖が強い家庭で資金的な余裕があるのであれば、予め返済期間を短くして過剰な浪費を抑える仕組みを作ったり、返済期間は長くして毎月返済額を抑え、浮いた分を教育資金、老後資金として定期的に定額を積み立てる金融商品を活用してみたりしてはいかがでしょうか?
5. 健康
もし、ご本人またはご家族に健康不安を抱えている方がいらっしゃれば、その医療費の備えも兼ねて貯蓄する(または医療保険等に加入する)必要性が高いと思われますので、返済期間を長めに設定して無理をせず返済したほうがよいでしょう。特に、借入申込者本人に健康不安があるようでしたら、病気で体調を崩し返済計画が崩れてしまうリスクが大きいため、返済期間を短く設定することは極力避けたほうがよいでしょう(最悪の場合、団体信用生命保険に加入できないために住宅ローンを組めない可能性もあります)。
6. 子どもの教育資金
子どもは持たない、子どもが小さく共働きであるなど、子どもの教育費が軽いうち(10年以内)に返済したいという場合は、予め返済期間を短く設定することも悪くないと思います。しかし、将来の子どもの教育費の負担が不安、教育資金の準備ができていない、といった場合には、無理をせず長い返済期間で設定し、教育費の負担が終わってから繰上げ返済をする、ある程度資金が貯まったら繰上げ返済をして返済期間を短縮する、というスタンスでもよいと思います。
7. 老後資金準備
目に見える形で準備しないと不安であるならば、定期的に積み立て(例:財形、NISA、つみたてNISA、確定拠出年金など)を利用して、その分、住宅ローンの毎月返済額が少なくなるように返済期間を長めに設定するとよいでしょう。
一方、目に見えなくても、住宅ローンの返済を早く終えることが老後資金準備への近道に見える方は、返済期間を短くして早く返済を終え、住宅ローン返済に充てていた資金を老後資金準備に振り向けてみてはいかがでしょうか。
返済期間を短くするためにはリスク要因がない(少ない)ことが条件
返済期間を長くする場合、夫婦のルール作り話し合いが必要
当初に組んだ住宅ローンの返済期間を長く変更することは通常できませんので、短い期間で返済するためには、以上で挙げたような条件等を参考にリスク要因がない、または少ないという場合にお勧めしています。
反対に、何らかのリスク要因を抱えているようであれば、とりあえず長めの返済期間で設定し、適宜繰上げ返済する等のアクションを起こして金利負担を減らすことをお勧めします。言い換えると、長めの返済期間で設定した場合、金利負担を減らすためには自らアクションを起こさなければなりません。そのアクションは必要に迫られて起こすものではないため、腰が重いと結果的に重い金利負担を背負うことになります。
ただし、現在は歴史的な低金利。長い返済期間でゆっくり返済し、繰上げ返済はせずに、余裕資金を投資に振り向けて資産を形成する、という考え方もあります。
大切なことは、夫婦(家庭内)の価値観が一致していること。
- 住宅ローンは●歳までに返済を終える
- 繰上げ返済はせずに、教育資金、老後資金向けに毎月●●万円を積み立てる
- 余裕資金が●●万円以上できたら、その●●%を繰上げ返済する
- 毎年、夏、冬のボーナスから●●万円ずつ繰上げ返済をする
などのルールを作り、確実に実行することが求められます。
ご自身の家族の状況、収入やお金とのつきあい方を棚卸しして、最もよい選択をしていただきたいと思います。
ファイナンシャルプランナー 益山 真一