住宅ローンの借換え

ご質問

低金利が続いている間に、住宅ローンの借換えをしたいと考えています。金利が低いものに借り換えればいいと思っていますが、事前に押さえておきたいポイントや注意点などがあれば教えてください。

回答

低金利のうちに借り換えたいというご相談を多くお受けします。確かに高い金利の住宅ローンから低い金利の住宅ローンに借り換えれば良いのですが、借換えには手数料が必要ですし、借換え先の住宅ローンも多岐にわたります。借換えの目的や目標によって選ぶべき住宅ローンは異なります。住宅ローンの借換えにおける、押さえておきたいポイントや注意点を確認しておきましょう。

住宅ローンの借換えは、目標と目的が大切です。

住宅ローンの返済が進むにつれ経済情勢や金利水準が変化したり、ライフスタイルが変化したり、と当初の返済条件に不具合が生じてくる場合があります。市場金利が低め安定となっている現在は、「借換えによって総返済額を減らしたい」、「毎月返済額を減額したい」、「金利を固定したい」などのご相談を多く受けます。さらにライフスタイルや家族構成、働き方の変化に伴う収入と支出の増減など、個人の事情による返済期間の短縮や返済方法の変更といった住宅ローンの見直しニーズも少なくありません。

返済中の住宅ローンを見直す際の手段の一つが「住宅ローンの借換え」です。「住宅ローンの借換え」とは、現在返済中の住宅ローンを全額返済し、別の住宅ローンを新たに借入れることを言いますが、現在返済中の住宅ローンの金利タイプを変更したり、返済方法を変更したり、という借入れ条件の変更は住宅ローンの借換えではありません。大切なことは、「現在の住宅ローンをどうしたいのか」というご自身の要望を明確にすることです。住宅ローンの見直しの目的や目標が明確になれば、最適な「住宅ローンの借換え」を実現できます。

「住宅ローンの借換え」にあたって、ご相談者が資金を受け取るまでのおおまかな流れは以下の通りです。

希望の明確化 ⇒ 借換えを含めた解決策の確認 ⇒ 借換えによるメリットとコストの試算 ⇒ 住宅ローン選び ⇒ 申込 ⇒ 審査 ⇒ 契約手続 ⇒ 資金受取

希望の明確化

「現在返済中の住宅ローンのどの部分をどのように変えたいか」を明確にします。例えば「毎月の返済が負担なので、減額したい」「定年後の返済が不安なので、返済期間を短くしたい」「金利が高いので金利を引き下げたい」「金利が上昇すると家計がつらいので、金利を固定したい」など、具体的にしていきます。希望を明確にしていくと、必ずしも借換えがベストな選択とは言えない場合が出てきます。さらに、希望のすべてを同時に適えることができないケースもあるでしょう。希望が多い場合は優先順位をつけて下さい。希望条件の優先順位が明確にできれば、住宅ローンアドバイザーなどのプロへ相談をします。希望条件を明確にしたり優先順位を決めたりするのはご相談者自身ですが、考え方や決め方等のプロセスをプロに相談することは迷いを解消できるため有効です。

住宅ローンアドバイザー等へ相談する際、あるいは、借換え先の金融機関へ相談する際は、返済中の住宅ローン情報が重要です。残高や残期間、金利タイプ、返済方法等をよく確認しておきましょう。そして、相談の際は償還表を持参します。加えて、償還表ではわからない繰上返済の履歴や住宅の名義、当初の物件価格や資金計画なども確認し、情報を整理しておきます。償還表とこれらの情報から、借換えによる効果を測ることができるのです。

住宅ローンの借換えメリット

「現在の住宅ローンをどうしたいか」。相談者自身の希望を叶えることが、住宅ローンの借換えメリットです。さらに、借換えコストと借換えメリットを十分に比較し検討することが重要です。面倒な借換えコストの試算や自分では気付けない借換えメリットの提示は、住宅ローンアドバイザー等プロの力を活用しましょう。選択肢も広がります。

住宅ローンを借換えることで得られる主なメリット

  1. より低利の住宅ローンに借換えると
    ⇒ 毎月返済額の減額。総返済額の減額
    ⇒ 返済額は維持し、返済期間を短縮
  2. 変動金利から固定金利の住宅ローンに借換えると
    ⇒ 金利変動リスクを軽減

住宅ローンの借換えシミュレーション

【フラット35】の借換え融資のパンフレットや住宅金融支援機構のホームページには、借換えの試算例が掲載されているので参考になさってください。また、借換えシミュレーションもあり、借換えによるメリットを簡単に試算することができます。
下記は、【フラット35】のパンフレットとホームページに掲載されている試算例で、「12年間返済した【フラット35】から【フラット20】に借り換えた場合」の例です。
超低金利のおかげで、過去の固定金利型から現在の固定金利型へ、過去の変動金利型から変動金利型へ借換えるなど、同じ金利タイプでの借換えも総返済額を減額できるケースが少なくありません。

返済中の方の中には、「自分は変動金利だから、世の中の金利が下がれば自分の住宅ローン金利も下がっている」と誤解し、自身が借換えの対象であると認識していない方も多くいらっしゃいます。実は、変動型住宅ローンの店頭金利は大きく下がってはいません。下がっているのは実際に返済額に反映される適用金利です。現在、金融機関では店頭金利に金利優遇を適用して引下げを行っているため、結果として適用金利が下がっているのです。過去に変動金利型を契約したケースでは、優遇幅が低く、場合によっては優遇がなく店頭金利のまま返済している可能性もあります。ご自身の住宅ローン金利について確認ください。

住宅ローンの借換えコスト

現在は適用金利が低いため、金利差が1%未満であっても、残りの返済期間が長い、残債が多いなどの場合は借換えメリットを期待できます。是非試算してみましょう。結果を吟味する際に大切なのは、コスト計算です。借換えでは、総返済額の減額幅の大きさが強調されがちですが、「手数料というコストを払っても十分な効果がある」ことを確認する必要があります。

借換えの本当の効果は、借換えによる総返済額の減額分から借換えコストを引き算して得られる純利益です。借換え先の候補となっている住宅ローンプランごとに純利益を試算し比較します。借換えコストとは、手数料や税金など下記のような諸費用を言います。現在返済中の住宅ローンや金融機関によって、そして借換え先の住宅ローンや金融機関によって、項目や金額、必要費用の有無が異なるため、事前に確認しておきましょう。

住宅ローンの借換えに伴う諸費用

  • 融資手数料
  • 印紙税
  • 住宅ローンの抵当権抹消費用(登録免許税、司法書士報酬など)
  • 住宅ローンの抵当権設定費用(登録免許税、司法書士報酬など)
  • 未払い利息
  • 保証料
  • 物件検査手数料(【フラット35】の場合)

借換え先の住宅ローンはトータルコストで選ぶこと

希望条件を満たす住宅ローン候補を絞っていきますが、「総返済額を減額する」ことを最優先にする場合、住宅ローン選びの最重要ポイントは「トータルコスト」です。トータルコストとは「金利+諸費用」で、例えば、もっとも低金利の住宅ローンを選んでも、諸費用が最高水準の高さであれば、トータルコストは選択肢の中でもっとも低くなるとは限りません。変動型を選択するならば試算結果は一つではありません。金利動向を加味した数パターンの試算が必要です。決して金利の低さだけ、諸費用の少なさだけで選んではなりません。総合的な試算と判断が必要です。例えば、融資手数料一つをとっても54,000円と定額の住宅ローンもあれば、融資額の2.16%と融資額に応じて変動する住宅ローンもあり、その利率が住宅ローンの金利によって変わったり、借入れする個人の条件によって変わったりするのですから複雑です。

残債が少なければ、定額の手数料よりも融資額に対する利率で決まる手数料の方がコストを抑えることができるかもしれません。ですがその際も、最低手数料なるものが定められていることが多いですし、手数料の計算方法に応じて適用利率が異なる場合もあり、トータルコストがもっとも低い住宅ローンを見極めることは難題です。より多くの選択肢の中からあなたの住宅ローンを最適化するため、住宅ローンに精通したプロのアドバイスを活用してください。

ご自身にあった住宅ローン選びを

借換え先の住宅ローンは、トータルコストで選ぶことが鉄則だとお話ししましたが、ご自身の条件とのマッチングも欠かせません。「変動金利型を選択した場合、金利上昇リスクを負える家計なのか」「固定期間選択型を選ぶとすれば、固定期間はどうするか」「住宅ローンを返済しながらも、教育費を支払い、老後資金の貯蓄ができるのか」など、家族のこと仕事のことを基本に家計収支と住宅ローン返済のバランスをチェックする必要があります。

個人の暮らしがあってこその住宅であり、個々の家計があってこその住宅ローン返済です。住宅ローンの返済だけでなく、ご自身とご家族の豊かな暮らしを実現するための価値あるお金の使い方を心掛けたいものです。ご相談をありがとうございました。

(参考)住宅金融支援機構「借換融資 ケーススタディ・計算例」

「12年間返済した【フラット35】から【フラット20】に借り換えた場合」

  借換前 借換後 借換後
(諸費用含む融資)
毎月返済額 約11.4万円 約10.8万円 約11.1万円
借入金 3,000万円 2,290万円 2,355万円
残高 約2,290万円 2,290万円 2,355万円
借入期間 35年 20年 20年
金利(年) 2.90% 1.30% 1.30%
借入当初からの
総返済額
約4,779万円 約4,240万円 約4,314万円
借換諸費用   約65万円
借換えによる
効果
毎月返済額 ▲約0.5万円 ▲約0.2万円
総返済額 ▲約539万円 ▲約465万円

試算条件

  • 当初借入金3,000万円
  • 残高2,290万円
  • 残借入期間23年間(借換後の借入期間20年)
  • 元利均等返済
  • 借換前の借入金利 年2.90%(借換後の借入金利 年1.30%)
  • ボーナス払いなし

(出典)住宅金融支援機構ホームページ

【フラット35】借換融資 ケーススタディ・試算例
【フラット35】借換えシミュレーション

ファイナンシャル・プランナー CFP® 大石 泉