適正なマンション管理と建て替え等を促進する制度

マンションは、主に鉄筋コンクリート造(RC)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)などの耐火構造の集合住宅です。区分所有されるものを「分譲マンション」、賃貸されるものを「賃貸マンション」に分類することがあります。
ここでは、区分所有される分譲マンションの管理の適正化及び建て替え等の促進に関する制度等の整備状況等に関する情報提供を行います。

マンションと管理

全国のマンションストックは約704万戸、約1,500万人が居住しています。都市部等では、なくてはならない住まいの形となっています。
マンションは、各住戸の床・壁・天井を境に他の住戸と接しています。その床・壁・天井は各住戸の居住者だけのものではなく、マンションに居住する区分所有者全員の共有財産です。それ以外にも、共用廊下や共用階段など共有されている部分が多い建物です。そのため、居住者の住戸だけでなく、区分所有者全体で協力して、共有部分を快適に使うために、適切な管理をする必要があります。
マンション管理の概要説明のためのマンション物件断面図。住戸の内部は個人資産であり専有部分。専有部分以外は共有財産であり共用部分。窓のサッシ・玄関ドア本体は共用部分で内側表面だけ専有部分。バルコニー・専用庭・駐車場は共有財産。
マンションの管理は、区分所有者全員により組織された管理組合によって行われます。管理組合は、区分所有法に基づき、区分所有関係が生じた場合には設立の手続きを行わなくても成立し、マンションの区分所有者全員が組合員となります。

マンションの管理の現状と課題

①維持管理等の方針を決める際には、管理組合が意識・価値観・経済力等が異なる区分所有者間の合意形成をする必要があります。
しかし、築40年を超えたマンションは、約137万戸、10年後には約2.0倍、20年後には約3.4倍となり、また居住者の高齢化も進み、今後、建物の老朽化や管理組合の理事などの担い手不足が顕著になるなどの問題を抱えたマンションが増加することが予想されています。

世帯主の年齢

棒グラフ「世帯主の年齢」。調査年度が平成15年、20年、25年、30年、令和5年を表した5本の棒グラフからなる。1本の棒グラフの中に調査対象の30歳未満、30歳以上、40歳以上、50歳以上、60歳以上、70歳以上、不明の7つに色分けして割合(単位は%)を表現。平成15年度の年代別割合は(下の世代から不明まで順に)1.2、13.2、25.8、28.0、21.5、10.2、0.2。平成20年度の年代別割合は0.8、11.9、22.9、24.1、26.4、13.0,0.9。平成25年度の年代別割合は0.5、7.6、18.9、22.8、31.1、18.9、0.6。平成30年度の年代別割合は0.5、6.6、18.9、24.3、27.0、22.2、0.6。令和5年度の年代別割合は0.3、5.9、15.7、23.7、27.8、25.9、0.8。
令和5年度マンション総合調査(国土交通省)

②管理組合の役員や区分所有者の多くは、建物の維持管理等に必要な専門的知識や経験を持っていないことが多く、このことが、維持管理等の合意形成が難しくなる原因の一つとなっています。
特に、タワーマンションなどマンションの大規模化や高層化により、マンションの維持管理は複雑化し専門知識が必要となり、管理組合の合意形成をさらに困難にしています。

③適切な長期修繕計画の不足や修繕積立金の不足等により必要な修繕がなされないマンションが増えることが懸念されます。

長期修繕計画上と実際の修繕積立金積立額の差

円グラフ「修繕積立金の積立状況」36.6%のマンションが修繕積立金の不足。現在の修繕積立金残高が計画に比べて余剰があるマンションは39.9%。
令和5年度マンション総合調査(国土交通省)

④既存住宅流通量の増加により、管理状況等に対する情報の提供が求められることが増えています。管理状況等がマンションの価値を左右することがあります。

マンションの建て替え等の現状と課題

マンションの老朽化によって、居住者ばかりでなく、近隣住民等の生命・身体に危険が生じるおそれがあります。旧耐震基準により建設されたマンションは、現在103万戸あると言われています。

旧耐震マンションの中には、地震に対する安全性に不安のあるものや、老朽化の問題を抱えているものが多く含まれています。新耐震基準に適合したマンションであっても高経年化することによって、基本的な機能に不具合が生じても、改修等が困難なマンションがあり、問題のあるマンションが増加することが考えられます。

これらのマンションでは、建て替えを検討することが必要となることがありますが、建て替えには次のような課題があります。

①建て替え事業の対象となるマンションでは、容積率に余裕のないマンションが多く、容積率の余剰分を売却することが難しく、事業採算性が低下する傾向があります。このようなマンションでは、区分所有者の経済的負担が大きくなります。

②大規模団地型マンションが高経年化した場合は、入居者が同時期に高齢化することがあります。区分所有者の多くが高齢者となった場合、建て替えに向けた合意形成が一層の困難になることが考えられます。
大規模な団地型マンションでは、建て替え等の再生を行うための多様な手法を検討する必要があります。

適切なマンションの管理と再生のための制度

マンションの管理の適正化とマンションの建て替え等再生の円滑化を進めるため、マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律(令和2年法律第62号)(令和2年6月24日公布)が改正されました(令和4年4月1日施行)。

今後、建築から相当の期間が経過したマンションが急速に増加することが見込まれ、建物・設備の老朽化、区分所有者の高齢化、賃貸化、空室化、管理組合の担い手不足、建替え等の再生に向けた合意形成の困難さ等の課題が顕在化してくることから、維持管理の適正化や再生の円滑化にむけた取り組みの強化等が必要とされています。

マンション管理適正化法

「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」は、マンション管理士の資格やマンション管理業者の登録制度を設ける等、マンション管理の適正化を推進するための措置を定めることにより、マンションの資産価値を守り、快適な住環境が確保できるようにとの目的から制定された法律です。 2020年6月の改正でより積極的に行政も関与しながら、マンションの管理水準を一層維持向上させていく仕組みができました。

マンション建替円滑化法

「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」は、マンション建替事業、除却する必要のあるマンションに係る特別な措置及びマンション敷地売却事業等について定めることにより、マンションの建替え等を円滑に実施できるようにするとともに、マンションの良好な居住環境の確保と倒壊等の被害から生命、身体、財産の保護を図ることを目的に制定された法律です。

マンション長寿命化促進税制

多くの高経年マンションにおいては、高齢化や工事費の上昇により、長寿命化工事に必要な積立金が不足しています。長寿命化工事が適切に行われないと、外壁剥落・廃墟化を招き、周囲への大きな悪影響や除却の行政代執行に伴う多額の行政負担が生じることとなります。
このため、必要な積立金の確保や適切な長寿命化工事の実施に向けた管理組合の合意形成を後押しすることを目的として、創設されました。

管理計画の認定を受けたマンション等において、長寿命化工事(屋根防水工事、床防水工事、外壁塗装等工事)が実施された場合に、その翌年度に課される建物部分の固定資産税額が減額されます。
減額割合は、1/6~1/2の範囲内(参酌基準:1/3)で市町村の条例で定めることとなります。

対象マンション

  • 築後20年以上が経過している10戸以上のマンション
  • 長寿命化工事を過去に1回以上適切に実施
  • 長寿命化工事の実施に必要な積立金を確保していること

※積立金を一定以上引き上げ、「管理計画の認定」を受けていること又は、地方公共団体の助言・指導を受けて適切に長期修繕計画の見直し等をしていること

対象工事

  • 令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間に完了した長寿命化工事
マンション長寿命化工事の実施のフロー図。マンションの長寿命化工事の実施した場合、得られる効果は以下の2点。1. マンションの各区分所有者に課される工事翌年度の固定資産税額(建物部分:100平方メートル分まで)を減額する。2. 減額割合は、1/6~1/2の範囲内(参酌基準:1/3)で市町村の条例で定める。

参考サイト

専門家・専門機関の活用の促進

マンションの管理の適正化を推進するため、地方公共団体と専門家・専門機関との一層の情報共有・連携や、管理が適正に行われていないマンションに対する専門機関の活用を図ることが必要になります。
また、マンションの再生の円滑化を推進するためには、専門家の育成、専門機関と連携した相談体制の強化を推進することが求められます。

一般社団法人再開発コーディネーター協会では、老朽化したマンションについての各種相談に対応するため、協会内に「マンション建替相談室」を開設しています。また全国各地の相談に対応するため、各地域のアドバイザーと連携して「マンション建替えアドバイザーネットワーク」を構築しています。

また、東京都にも同様の窓口がありますので、下記の参考サイトをご確認ください。

参考サイト

住宅金融支援機構による支援等

フラット35維持保全型の対象追加

維持保全・維持管理に配慮した住宅や既存住宅の流通に資する住宅を取得する場合に【フラット35】の借入金利を一定期間引き下げることができます。
令和4年4月より、「管理計画認定マンション(既存)」、「予備認定マンション (新築)」が対象になりました。

マンション共用部分リフォーム融資の金利引下げ

管理計画認定マンションについて、金利を引き下げられます。

マンションすまい・る債における利率上乗せ制度の創設(令和5年度募集分より)

管理計画認定マンションの管理組合の場合に、マンションすまい・る債の利率を上乗せする制度が創設されました。

「大規模修繕の手引き」の作成

マンション管理組合が、管理会社や施工会社等のパートナーと協同して大規模修繕工事を円滑に進めるための手引きが作成されました。
冊子表紙「大規模修繕の手引き」ダイジェスト版と詳細版の2点

「マンションライフサイクルシミュレーション~長期修繕ナビ~」の充実

建物規模、築年数等に応じたマンションの「平均的な大規模修繕工事費用」、今後40年間の「修繕積立金の負担額」「修繕積立金会計の収支」等をシミュレーションするツールが充実されました。

参考サイト

参考文献

マンションの管理等に関することは、住宅金融普及協会発行の「住まいの管理手帳」にも掲載されています。(マンション編:P.38~56)