除雪作業による事故と防止策

積雪による被害には、雪崩、除雪中の転落事故、路面凍結などによる交通事故や歩行中の転倒事故などの様々な事故があります。
ここでは、積雪地にお住まいの方にとって、住まいを守るために必要となる除雪作業中に起こる事故とその防止策をまとめました。

除雪作業中の事故

雪による事故の死者の多くは除雪中の事故によるものです。(令和4年度中の雪による人的被害の約8割が雪下ろし等の除雪中の事故。ただし、交通事故及び転倒によるものを除く)
除雪中の事故は、自宅など建物の屋根雪下ろしや雪かき等の作業中に発生しています。事故による人的被害は高齢者が多くなっています。

屋根からの転落

雪下ろし中に屋根の上から転落したり、雪が滑り落ちてきてバランスを崩して転落する事故が起こっています。転落事故は、高齢者や一人での作業中に多く発生しています。
雪下ろしをする場合は、何かあった時に対応できるように作業は複数人で行うようにしましょう。
除雪作業中に起きる事故のイメージ。屋根からの転落による死者41%、屋根からの落雪による死者17%、除雪機に巻き込まれた死者数5%、水路への転落による死者10%、屋根からの転落事故の32%は梯子から、転落死者のうち51%が地面に強打、転落死者のうち60%が1階の屋根から、除雪作業中の発作による死者8%。各死者数の比率は平成22年度調査(内閣府・国土交通省)による。

転落以外の除雪作業中の事故

  1. 軒下で除雪中に落雪で埋まったり、落雪が直撃する事故
  2. 水路等への転落
  3. 融雪槽に投雪中、槽に転落する事故
  4. 除雪機のエンジンを止めずに、雪詰まりを取り除こうとして巻き込まれる事故
  5. 寒い屋外での除雪作業中に心筋梗塞などを発症し、心肺停止などで倒れる事故

除雪作業中の事故の防止

除雪作業中の事故の危険を理解し、適切な安全対策を講じることが、事故を防止します。
除雪作業前に事故防止のポイントを確認しましょう。

雪下ろし安全10箇条

1. 安全な装備で行う

  • 安全な装備は、屋根からの転落などの事故を未然に防ぎます。
  • 安全帯は、腰全体を支えるハーネス型や体全体を支えるフルハーネス型を使用。
  • 命綱は、ザイルロープなど丈夫なものを屋根の上で止まる長さで正しく結ぶ。
  • 命綱の一端は、アンカー(無い場合は雪下ろしをする屋根の反対側の柱や固定物)にしっかり固定する。
  • ヘルメットは、あごひもを締め、長靴は、滑りにくいものを使用し、動きやすい服装で作業する。
  • これらの装備は、ホームセンターや登山キャンプ用品店などで購入できます。

2. はしごは固定する

  • はしごが転倒することがあるため、必ずしっかり固定する。
  • 足元をしっかり固め、ロープや器具を使用。
  • はしごは、斜めに立てかけず、屋根に対して決められた角度でまっすぐ立てる。
  • はしごの長さは、軒先から少し高くかける。
  • はしごの昇り降りは注意し、はしごから屋根に移動するときは特に注意。
  • はしごの上で雪庇を落とすなどの作業は危険なため、絶対にやめましょう。

3. 作業は2人以上で行う

  • 1人での作業は、事故が発生した際に、発見が遅れる可能性がある。
  • 発見が遅れると重大な事故につながる危険性が高くなる。
  • 家族や親戚と一緒に複数人で除雪作業を行う。
  • 近所の方や地域コミュニティと協力して作業を行う共助による除雪活動も重要。

4. 足場の確認を行う

  • 屋根の雪止めの位置を確認してから作業を行う。
  • 落雪に巻き込まれないように、屋根の上から下ろす。
  • 滑りにくくするよう、雪は少し残して作業する。
  • 晴れていて気温が高い日は、滑りやすくなるため、特に注意。
  • 水路等に転落する事故も増えているため注意。

5. 雪下ろしのときは周りに雪を残す

  • 屋根から転落した際に、地面、アスファルト、コンクリート等に強打すると、被害が大きくなる可能性がある。
  • 落下した場所に積雪があることで被害を軽減することができる場合がある。
  • 屋根の雪下ろしを行う場合は、雪下ろし後に住宅周りの除雪を行う。

6. 屋根から雪が落ちてこないか注意する

  • 屋根から雪が落ちてくる可能性があるため、住宅の周りで除雪する際に軒下では注意。
  • 屋根に雪が積もって時間が経つと、氷のように堅くなり、直撃すると非常に危険。
  • 新雪や晴れて暖かい日のゆるくなった雪は特に注意。
  • 屋根雪を人力によらず落下させる落雪式住宅の場合は特に注意。

7. 除雪道具や安全対策用具の手入れ点検を行う

  • スコップやスノーダンプなどの除雪道具は、雪がつきにくくなるスプレーを使用するなど使いやすくしておく。
  • 除雪道具や安全対策用具が古くなり、壊れていないか定期的に点検しましょう。

8. 除雪機の雪詰まりはエンジンを切ってから棒などで取り除く

  • 雪が詰まったときは、必ずエンジンを切ってから雪を取り除く。
  • つまりを取り除くときは、棒などを使用する。
  • 素手で取り除くのは、非常に危険なため絶対やめましょう。
  • デッドマンクラッチ(安全装置)をひもで縛るなど、無効化することによる事故が増えています。絶対にやめましょう。

9. 携帯電話を身につける

  • 事故が発生したときは、動くことができなくなることがあります。
  • 携帯電話を身につけることで、緊急時でも家族や緊急医療機関などにすぐに連絡をとることができます。

10. 無理はしない

  • 除雪作業は重労働です。体調が悪いときは、除雪作業を行わない。
  • 作業前には、準備運動を行う。
  • こまめに休憩をとりながら作業を行う。
  • 寒い屋外での重労働による発作など発症の危険性があるため無理をしない。

参考サイト

関連動画

空き家などの除雪

空き家の除雪が行われず、危険な状態になっている場合には、法律の定めに基づき市町村長の判断で雪下ろしを行うことが可能です。
お困りの際は市町村に問い合わせ下さい。

参考図書

積雪対策に関することは、住宅金融普及協会発行の「住まいの管理手帳」にも掲載されています。(戸建て編:P.42~43)