住まいの省エネルギーを考える

住まいの省エネルギーはなぜ必要か

我が国のエネルギー消費は、工場などの産業部門は減少していますが、事務所・商店や家庭などの民生部門と、自動車などの運輸部門での増加が大きいため、全体として増加しています。家庭部門は、第一次石油ショックがあった1973年度から、2018年度までの間に、約2倍に増加しています。

地球温暖化にストップをかけるためには、一人ひとりが問題意識を持ち、省エネを実行することが必要です。住まいの省エネルギー対策への取り組みによって、大きな成果を得ることができます。

参考サイト

省エネルギー住宅に関する政策の動き

エネルギー基本計画(令和3年10月閣議決定)において、「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」とともに、「2030年において新築戸建て住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」とする政策目標が設定されました。
地球温暖化対策計画(令和3年10月閣議決定)においても同様に政策目標が設定されています。
2050年カーボンニュートラル実現に向けて、住宅の省エネ・省CO2化に取り組むことが強く求められています。

2005年カーボンニュートラル実現に向けて、関係省庁(経済産業省・国土交通省・環境省)が連携して、住宅省エネ・省CO2化に取り組み、2030年度以降に新築される住宅について、ZEH水準の省エネ性能の確保を目指し、ZEH等に関する支援を継続・充実する。
さらに省CO2化を進めた先進的な低炭素住宅
(ライフサイクルカーボンマイナス住宅(LCCM住宅))

(国土交通省) 令和5年度予算 345.47億円の内数

ZEHに対する支援
将来の更なる普及に向けて供給を促進すべきZEH
※戸建住宅におけるより高性能な次世代ZEH+、集合住宅(超高層)

(経済産業省) 令和5年度予算 68億円の内数

引き続き普及促進すべきZEH
※戸建住宅におけるZEHより高性能なZEH+、集合住宅(高層以下)

(環境省) 令和5年度予算 100億円の内数

中小工務店等が連携して建設するZEH
※ZEHの施工経験が乏しい事業者に対する優遇

(国土交通省)令和5年度予算 279.18億円の内数

省エネ性能
表示制度
(BELS)
申請手続きの
共通化
関係情報の
一元的提供

参考サイト

建築物省エネルギー法

建築物のエネルギー消費性能の向上を図るため、住宅以外の一定規模以上の建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務の創設、エネルギー消費性能向上計画の認定制度の創設等の措置が講じられています。

建築物省エネルギー法の概要

適合義務制度

内容:
新築時おける省エネ基準への適合義務基準適合について、所管行政庁又は登録省エネ判定機関登録の省エネ判定の省エネ適合性判定を受ける必要

※省エネ基準への適合が確認できない場合、着工・開業ができない、着工・開業ができない

対象:
300㎡以上の非住宅建築物

届出義務制度

内容:
新築時における所管行政庁への省エネ計画の届出義務(不適合の場合、必要に応じ、所管行政庁が指示、命令)

⇒住宅性能評価やBELS等により、届け出期限を着工の21日前から3日間に短縮

⇒あわせて、指示、命令等を強化

対象:
300㎡以上の住宅

説明義務制度

内容:
設計の際に、建築士から建築主に対して、省エネ基準への適否等の説明を行う義務
対象:
300㎡未満の住宅・建築物

住宅トップランナー制度

内容:
住宅トップランナー基準(省エネ基準より高い水準)を定め、省エネ性能を誘導(必要に応じて、大臣が指導・勧告・命令・公表)
対象:
分譲戸建住宅を年間150戸以上供給する事業者
注文戸建住宅を年間300戸以上供給する事業者
賃貸アパートを年間1,000戸以上供給する事業者
容積率特例に係る認定制度

誘導基準に適合すること等について所管行政庁の認定により、容積特例を受けることが可能

⇒対象に複数の建築物の連携による取り組みを含む

※省エネ性能向上のための設備について通常の建築物の床面積を超える部分を不算入(10%を上限)

省エネ性能に係る表示制度
基準適合認定制度:
省エネ基準に適合することについて所管行政庁の認定を受けると、その旨を表示することが可能
BELS:
建築物省エネ性能表示制度、登録省エネ判定機関等による評価表を受けると、省エネ性能に応じて5段階の★で表示することが可能
その他:
基本方針の策定、建築主等の努力義務、建築主等に対する指導助言、新技術の評価のための大臣認定制度、条例による基準強化

参考:住宅等の省エネルギー施策に関する法令改正の動き

令和4年6月13日に住宅等の省エネルギー化を進めるための関連法令が改正されました。 この改正により、3年以内に全ての新築住宅や小規模ビルを対象に、外壁や屋根の断熱性能や設備の性能等を定めた省エネルギー基準に適合させることが義務付けられます。この改正法の施行前は、省エネルギー基準への適合義務は中規模以上のビルが対象ですが、新築の戸建て住宅などに対象が拡大されることになります。
また、既存の住宅に省エネルギー性能を向上させるリフォームを行う場合は、住宅金融支援機構による低利の融資制度も新設されます。

参考サイト

住宅の断熱(遮熱)による省エネルギー

省エネで快適な住い作りには、冬は「保温のための断熱対策」、夏は主に「日射遮蔽による遮熱対策」が重要です。

イメージ「住宅の内外での熱の移動」

住宅の「断熱」

住宅の断熱の基本は、住宅全体で外気に接している部分(床・外壁・天井又は屋根)を、隙間なく断熱材で包み込むことです。
断熱性能の低い壁の室内側の表面には温度差が発生しやすく、結露の原因になる場合があります。 また、住宅の開口部(特に窓)の断熱性能を高めることも重要です。
冬の暖房時に、室内の熱の約6割が窓などの開口部から失われます。夏の冷房時には、外気の熱の約7割が開口部から侵入します。

断熱施工のモデル図
住宅の「断熱」に関するイメージ。冬の暖房時の熱が開口部から流出する割合58%。夏の冷房時(昼)に開口部から流出する割合73%。

住宅の「遮熱」

断熱化が進んでいる住宅は、室内に熱を取り入れてしまうと、それを室外に排出することが難しくなります。夏は、冷房機器の効率に影響を及ぼす直射日光による熱を室内に取り入れないように、窓の遮熱対策を実施することが必要です。

住宅の「遮熱」に関する概要図。室内側はブラインド、障子、カーテン。室外側は植栽、オーニング、ひさし、遮熱ペアガラスなど。

住宅の「換気」

断熱性と気密性の向上した住宅では、常に換気を行うことにより、室内および部屋間の温度を均一にすることができて、快適性が向上するだけでなく、シックハウスや結露対策としても効果があります。

HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)

家庭内で多くのエネルギーを消費するエアコンや給湯器を中心に、照明や情報家電まで含め、エネルギー消費量を可視化しつつ積極的な制御を行うことで、省エネやピークカットの効果を狙う仕組みが「HEMS(ヘムス、Home Energy Management System)」です。
家電機器をネットワークする統一の通信規格が制定され、「スマートハウス」「IoT(Internet of Things)」「みまもり機能」「電力小売全面自由化」など新たなキーワードとともに、次の展開も広がっています。

一戸建てにおける「スマートメーター」「HEMS」「CTセンサ」の機能に関する概要図

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

ZEHは、快適な室内環境を保ちながら、住宅の⾼断熱化と⾼効率設備によりできる限りの省エネルギーに努め、太陽光発電等によりエネルギーを創ることで、1年間で消費する住宅のエネルギー量が正味(ネット)で概ねゼロ以下となる住宅のことです。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の簡略図

ZEHによるメリット

①経済性
高い断熱性能や高効率設備の利用により、月々の光熱費を安く抑えることができます。
また、太陽光発電等による余剰電力売電を行った場合は、収入を得ることができます。

②快適・健康性
高断熱の家は、室温を一定に保ちやすいので、夏は涼しく、冬は暖かい、快適な生活が送れます。
また、断熱性能が優れている住宅は、家中の温度が均一になりますので、急激な温度変化によるヒートショックによる心筋梗塞等の事故を防ぐことができます。さらに、結露やカビの発生を抑える効果もあります。

③災害対策
台風や地震など、災害の発生に伴う停電時においても、太陽光発電や蓄電池を活用すれば、住宅の電気機器を使うことができ、非常時でも安心な生活を送ることができます。

ZEH普及のための国の取り組み

2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画における「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」、「2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」という政府目標の達成に向けて、ZEHの普及に向けた取り組みが行われています。

LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅

LCCM(エルシーシーエム)(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅とは、建設時、運用時、廃棄時において出来るだけ省CO2に取り組み、さらに太陽光発電などを利用した再生可能エネルギーの創出により、住宅建設時のCO2排出量も含めライフサイクルを通じてのCO2の収支をマイナスにする住宅です。

国土交通省によるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅に関する概要図

参考サイト