二世帯住宅のケース

会社員Eさんは、二人目の子どもが生まれたのをきっかけに、父親と一緒にすむ二世帯住宅を建てることを検討。父親名義の土地に、二世帯住宅を建築予定。

家族構成:
会社員Eさん(30歳)、Eさん父親(58歳)、Eさん妻(専業主婦、33 歳)、子ども2人(2歳、0歳)
年収:
Eさん300万円、Eさんの父700万円
貯蓄額:
Eさん300万円、Eさんの父1,800万円
物件概要:
Eさん父親名義の土地に建物を建築予定、建築費 3,500万円
借入希望額:
2,500万円

Eさんに合った住宅ローンはどのようなタイプ?

親が借りて、子どもが引き継ぐ「親子リレー返済」を利用する場合

親子リレー返済は、多くの金融機関で取り扱われ、親が高齢でも、後継者の借入申込時の年齢をもとに長期間の借入の申し込みができる仕組みである。
フラット35でEさんの父親が単独で住宅ローンを組むなら80歳までの21年間が限度であるが、子のEさんが連帯債務者となって引き継ぐことにすれば、長期間の返済が可能になる。
団体信用生命保険は、フラット35では任意で、親と子のどちらか一方の加入(80歳まで)となる。親が80歳になったら、手続きをすることで子の加入へと切り替えられるが、万一、親が加入期間中に死亡した場合は団体信用生命保険で住宅ローンが完済され、返済が子に引き継がれることはない。

最初から親子それぞれ同時に住宅ローンを組む「親子ペアローン」の場合

親子ペアローンは、親子が住宅を共有し、親子それぞれで住宅ローンを組み、並行して返済していくという仕組みである。2人の収入に応じて単独の場合よりも借入を増やすことや、1人ずつ異なる完済時期を設定できる。
また、2人の借入額や返済額もはっきりし、親子それぞれが住宅ローン控除を受けられるというメリットがある。団体信用生命保険も親子それぞれが加入することになる。
なお、フラット35を利用するには、建物について区分登記をする必要がある。

①親子リレー返済

全期間固定金利型のフラット35で安定した返済プランを考える場合、子どもであるEさんの年齢を基準に30年返済で組むと、期間中の返済は毎月一定で約10万円となる。ただし、父親が80歳まで返済する負担や、二世帯の生活費の負担を考慮し、親子で協力することが重要である。
親子リレー返済は、親の収入や健康状態、勤務先の経営状況等の不安定要素が多く、当初は親が返済することは決まっていても、いつから子が返済を引き継ぐのか等の点が曖昧で問題化することもあるので、慎重に検討する必要がある。

親子リレー返済の場合(フラット35 返済期間:30年 金利:2.3%)

借入額:2,500万円

毎月返済額 96,200円。父親は80歳まで(団信の保障がある)。子(Hさん)は住宅ローンを父親から引き継ぐ。

②親子ペアローン

定年が近いEさんの父親は、返済期間10年程度を目途に10年固定金利期間選択型を利用することとし、将来の教育費負担が心配なEさんは、少なくとも10年は金利が固定される10年固定金利期間選択型を利用する。金融機関の債権保全の関係上、親子とも同じ金融機関で借り入れることになる。
下図のようにEさんの父親とEさんが無理なく返済するためには、借入額2,500万円のうち、父親は700万円の借入で毎月6.3万円を10年で完済できる予定に、Eさんは1800万円の借入、30年返済で当初10年間は毎月6.4万円というプランが考えられる。
これによって、仮に10年経過後に金利が上昇しても親の分は完済できてとおり、Eさんの借入残高は約1,304万円に減っているので、金利上昇の影響もある程度はおさえることができる。

親子ペアローンの場合(最初から親子で同時に住宅ローンを組む場合)

借入額:2,500万円
親子とも10年固定の場合

  1. 父親は700万円を10年固定1.8%で10年借入れ
  2. 子(Hさん)は1,800万円を10年固定1.8%で30年借入れ
父親は毎月返済額63,784円で68歳完済。子(Hさん)は毎月返済額64,745円で11年目以降金利が上昇しても、借入残高が減少しているので影響は少ない。ただし、金利が大幅に上昇した場合は要注意。11年目に金利見直し金利が3.0%に上昇しても毎月返済額は72,327円。