第4回 変動金利と固定金利の比較

これまで3回にわたって、APR(Annual Parcent Rate/年換算利回り)について、説明をしてきました。第4回は、金利予測をしないことを前提に、APRとスプレッド分析を使用した総体的な住宅ローン比較方法について取り上げてみます。

変動金利と固定金利をスプレッド分析で比較

今回はAPRとあわせて、スプレッド分析も用いて、住宅ローン商品の比較をしてみましょう。スプレッド分析とは、社債と国債のスプレッド(利回り較差)を分析するなど、投資手法の一つとして利用されているものです。この手法を住宅ローンの金利の分析に利用すると、非常に興味深いデータが得られます。変動金利と固定金利のどちらを選択するか、という問題に対してこの分析が有用な情報を提供してくれますし、金利が上がっても下がっても、支払いに問題が起こらないような選択をすることができるのです。
まず変動金利と固定金利のヒストリカルデータをAPRにしたものをグラフ化してみます。

グラフ1

フラット35と変動金利のヒストリカルデータをAPRにしたものをグラフ化

フラット35については、次のような条件で計算しています。

フラット35Sで、最安金利を基準とし、最優遇金利を適用。基準金利に適用できる最優遇幅を適用しています。融資手数料は融資額×2.16%、団体信用生命保険は普通団信。

変動金利については、某メガバンクのデータで、最優遇を適用した金利となっています。こちらも、基準金利の月に適用できる最優遇幅を適用しています。融資手数料は32,400円、保証料は融資額×2.06%です。

グラフ1は、フラット35の取扱いが始まった2004年1月から2015年8月までの月次データです。これを見ると、フラット35は金利が高く、変動金利は金利が低いということはすぐにわかりますが、それ以上の情報を読み解くのは簡単ではありません。
ここで長短スプレッドの分析を組み合わせてみましょう。
多くの方は、金利の絶対水準のみを比較して検討するだけですが、スプレッド分析のような相対比較を行うことで、変動金利と固定金利のどちらが割安であるかを比較することができます。

グラフ2をご覧ください。これは変動金利とフラット35の金利差をグラフにしたもので、水平の線はその平均を表しています。
変動金利と固定金利の金利差というのは、金利変動リスクの大きさを表していると考えられます。言い換えれば、その差は、金利変動リスクを回避するための保険料ともいえます。

グラフ2

変動金利とフラット35の金利差をグラフにしたもの

この金利変動リスク保険料は、変動金利とフラット35の差ではありますが、それぞれが全く別々に動いている訳ですから、安くなったり高くなったりします。
平均値は1.314%で、それよりも高ければ変動金利が割安、それよりも低ければ固定金利が割安であることがわかります。結果、2015年8月は、フラット35が相対的に割安であるといえます。

住宅ローンアドバイザー 淡河 範明