第1回 APRの計算方法

住宅ローンを選択するときには、当初の金利だけではなく、当初期間終了後の金利変動に伴う返済額の増減及び諸費用などを考慮したトータルコストにより比較することが重要です。

APRとは?

この住宅ローン総支払額に近い考え方の指標でAPRがあります。
APRとはAnnual Percentage Rate(年換算利回り)の略語で、様々な金融機関から提供されている金利や諸費用の異なる住宅ローンを比較するために、住宅ローンの借入れに際してかかる諸費用、保証料、団体信用生命保険料を考慮して算出した実質的なコストを示す参考指標です。日本においては金融機関での提示が義務づけられていないのですが、米国においては法律で提示しなければならないものと定められています。

APRの計算方法

このAPRの計算は、現時点ではフラット35のHPにあるシミュレーターを利用するのがよいでしょう。「返済プラン比較シミュレーション」で個別の住宅ローンを試算すると、その結果のページに「APRを表示する」というボタンがあり、それを押すと表示されます。もちろん、そのページには住宅ローンの総支払額も表示されているので参考にしてください。

では、金利の違いについて簡単な試算をしてみましょう。
例として、S銀行とI銀行の変動金利におけるAPRを比較します。ここでは比較しやすいように、最優遇金利を適用できるという前提で試算しています。

(例1)

借入金額3,000万円、借入期間35年、元利均等返済
S銀行:変動セレクト0.539%、融資手数料:借入金額の2.16%
I銀行:変動金利0.57%、融資手数料:借入金額の2.16%

試算結果は次のとおりです。
S銀行:総支払額3,357万円、APR 0.668%
I銀行:総支払額3,374万円、APR 0.699%

こうしてみると、金利が低い住宅ローン商品のほうが、総支払額、APRともに低くなっていることがわかります。
なお、APR計算上の注意点として、借入期間中の全ての期間について適用金利を指定する必要があります。変動金利の場合、半年間の固定期間が終了したら金利が見直されるため、本来であれば金利を確定することはできませんが、その後も引き続き変動金利を適用し、最初の金利が借入期間終了まで変わらないものと仮定しています。日本においては、APRについて一部固定金利、変動金利にかかわらず固定期間終了後の適用金利をどうするか、ガイドラインはないようです。そこで私はこの事例において、変動金利を適用することとしています。このときの変動金利に金利引下げなどの優遇制度があれば、それを適用して計算することを忘れないでください。

では次に、諸費用や借入期間に違いがある場合の比較をしてみましょう。

(例2)

S銀行:変動セレクト0.539%、融資手数料:借入金額の2.16%
S銀行:変動金利0.839%、融資手数料43,200円

試算結果は次のとおりです。
借入金額3,000万円、借入期間35年、元利均等返済
変動セレクト:総支払額3,357万円、APR 0.668%
変動金利:総支払額3,467万円、APR 0.847%

借入金額3,000万円、借入期間12年、元利均等返済
変動セレクト:総支払額3,163万円、APR 0.905%
変動金利:総支払額3,158万円、APR 0.863%

期間が長ければ金利の影響が大きく、期間が短ければ諸費用の影響が大きいことがわかります。

住宅ローンアドバイザー 淡河 範明