高齢期に住宅資産を活用する手段として注目されるリバースモーゲージ
住宅ローンの返済は、住宅の取得時に、収入や将来の生活設計を見通して計画し、人生の長きにわたり返済していきますが、住宅ローン完済時に近くなると、住宅所有者自身の高齢化に伴い、自宅のバリアフリー化や利便性が高いマンションへの住み替えのニーズも高まってきます。一方、人生100年時代と称される中で、高齢期に入ると、年金の受給を基礎に貯蓄の取り崩しにより生活費を工面する生活となるため、そのようなニーズに対応する資金が十分ではない場合も生じてきます。
こうしたなかで、最近、所有する住宅や土地などの不動産を資金化する融資として借入者の死亡時に一括して返済する方式の「リバースモーゲージ」が注目されています。住宅取得やリフォームに関連した「リバースモーゲージ」を取り扱っている金融機関はこの2~3年間に増加しており(図1)、リバースモーゲージの融資実績も、29年度は前年度に比べ増加しています。
図1 リバースモーゲージ取扱金融機関数の推移

(資料)国土交通省「民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」(各年度)
住宅金融支援機構「【リ・バース60】の利用実績等の公表について」(平成30年5月18日)
(注)住宅金融支援機構(【リ・バース60】)の取扱金融機関数は、平成28年度以降は年度末。平成27年度以前は公表ベース上不明。
リバースモーゲージの特徴
リバースモーゲージは、一般に、高齢者が所有する住宅や土地などの不動産を担保として融資するローンで、利用目的が自由なものや住宅関連資金などに特定するもの(定期的または一括融資)があり、借入者の死亡時にその担保不動産の処分やその他の金融資産によって一括返済(精算)する仕組みです。住宅ローンに比べて毎月の返済額が少額になるため、手元に金融資産を残しておきたいシニア層のニーズにもマッチしていると考えられます。
リバースモーゲージは、次のような特徴が挙げられますが、特に、一般的な住宅ローンとの大きな違いは返済方法にあります。
- ①利用者の年齢:
- 主に55歳または60歳以上のシニア層(年齢上限がない場合もある)
- ②利用目的:
- 利用目的が自由であるもののほか、生活資金、住宅取得・リフォーム資金、賃貸用不動産の建設など
- ③融資金利:
- 変動金利を基準として一定の調整率を上乗せ
- ④返済方法:
- 融資額(元金)は、死亡時一括返済利息は毎月払いまたは死亡時に元金と共に一括返済(図2-1、図2-2)
- ⑤担保設定:
- 所有する不動産(土地、建物)に対する抵当権または根抵当権の設定担保割れリスクを補うため、融資限度額(極度額)は、担保評価額の50〜70%程度で設定。ただし、後順位の権利設定は不可
リバーズモーゲージの融資の実行から死亡時一括返済のイメージ
図2-1 リバースモーゲージ「利用目的自由型」の死亡時一括返済イメージ
- 融資額:分割融資(定期、不定期)
- 利息返済:毎月払い
- 元金返済:死亡時一括

図2-2 リバースモーゲージ「住宅資金利用型」の死亡時一括返済イメージ
- 融資額:一括融資(住宅資金等)
- 利息返済:毎月払い
- 元金返済:死亡時一括

金融機関のリバースモーゲージ商品は多様で、事務手数料も高めに設定される場合があり、担保とする物件評価基準や根抵当権の極度額の掛け目の計算方法、資金目的や適用金利の違いはもちろん、融資期間中の利息返済を必要としない金融機関もあります。また、一部の商品では申込人死亡時に担保物件を売却せず、配偶者がローンを引き継ぎできるものもあり、シニア層の幅広いニーズに対応できるのがリバースモーゲージの仕組みと考えられます。
リバースモーゲージ商品は、不動産所有者の年金の補填や、介護関連費用の手当、住み替え、住宅のリフォーム資金など、今後益々注目され、その需要の拡大も見込まれます。
しかし、リバースモーゲージには、死亡時の元利金の一括返済といった特徴があるため、利用者からみた注意点として、相続時の返済方法(相続人等による担保不動産の処分手続き、後順位担保設定の不可など)、配偶者の居住の継続など、将来の相続を想定しつつ、しっかりとライフサイクルを見極める必要があります。