借換えの目的
借換えは「毎月の返済額を抑える」「総返済額を抑える」「金利上昇リスクを抑える」3つの効果を期待して行われる。
何のために借換えを行いたいのかを明確にして検討することが重要である。
1. 総返済額を抑えるための借換え
総返済額を抑えたい場合、当然現在借り入れしている住宅ローンの金利よりも低い金利を選択することが必要である。
ただし、いくら金利が低くなるからといって、金利が上昇した場合に総返済額が増える可能性が高くなる借換えはするべきではない。
たとえば、10年の固定金利期間選択型で借り入れ、5年経過している場合、5年以上の固定金利期間選択型や全期間固定金利型で、かつ金利が低くなるものを検討する必要がある。
(総返済額を抑えるために検討できる金利タイプの借換えパターン)

● 全期間固定金利型 ⇒ 全期間固定金利型

● 固定金利期間選択型 ⇒ 固定金利期間終了時期が同じ固定金利期間選択型

2. 金利上昇リスクを回避するための借換え
返済期間の長い住宅ローンを変動金利や固定金利期間選択型で借りる人には、潜在的な金利上昇リスクがある。そのリスクを回避する方法の1つが「金利上昇リスクを回避するための借換え」を行うことである。
下図のように、返済期間の長い住宅ローンを短期の固定金利期間選択型で借りた場合には、固定金利期間終了後における金利の変動、つまり返済額の変動を覚悟しなければならない。
しかし、全期間固定金利型に借り換えることで、毎月の返済額は多少増加したとしても金利上昇リスクは払拭され、家計管理はしやすくなる。
金利上昇リスクを回避するための借換えを行う場合は、残返済期間すべてを固定金利にするだけでなく、残返済期間以内で今より固定金利期間を長くする借換えも効果がある。
残返済期間が20年であれば、当然20年間の全期間固定金利型が理想だが、金利差が大きく、返済額の増加が大きい場合は、例えば10年固定の固定金利期間選択型に借り換えて、金利や返済額が固定される期間を延ばすのも一つの方法である。11年目以降に金利が上昇することも想定し、返済額軽減型の繰上返済ができるよう貯蓄することも検討したい。

借換えを行うと毎月返済額は増加するが、11年目以降の金利上昇を加味すると、総返済額は借換え前より減少する。
11年目以降の金利が下降した場合は、借換え後の方が総返済額が増加するため、金利変動にどこまで対応できるか検討したうえで借換えを行うことが大切である。
3. 毎月の返済額を抑える借換え
長い返済期間中には、収入減少や支出増加などの家計収支の変化も当然起こるものであり、今の返済額そのものを軽くしたいというニーズも借換えの動機として発生する。
例えば、世帯主の年収そのものが減少するケース、共働きだった家庭で配偶者が仕事を辞めたケース、教育費などの支出が増加したケースなどがある。
また、変動金利や固定金利期間選択型などで、金利の見直しによって返済額が増加してしまったために借換えを検討するケースもある。
例えば、下記のように、現時点から5年間は3.0%の金利が約束されているケースであれば、5年固定金利1.5%の住宅ローンに借換えすると、5年間は金利差分の返済額が抑えられる。まずは当面の返済を抑えたい場合に候補となる借換えパターンである。
また、下記の例では、借換えの諸費用は80万円かかるが、5年間の返済額で抑えられた額は120万円であり、諸費用を含めても当面の借換え効果が出ているといえる。
ただし、5年後には金利が見直されるので、金利上昇リスクも考慮し、将来の返済額負担増への対策も講じておくことが必要である。

- ① 5年後の店頭金利が3.4%(引下げ後2.0%)の場合
毎月返済額111,528円、借換え後における総返済額+諸費用 約4,159万円 - ② 5年後の店頭金利が4.4%(引下げ後3.0%)の場合
毎月返済額122,267円、借換え後における総返済額+諸費用 約4,417万円
上記のように、借換え後5年間の毎月返済額は20,098円減少し、借換え諸費用80万円を考慮しても、5年間で約40万円の軽減となる。
また、金利上昇により4.4%になったとしても、引下げ後の金利が全期間固定と同水準であるため、借換え前より総返済額が増加することは避けられる。