伝統的な日本家屋を見直す

現代は、「人に優しい」という言葉に代表されるように、人の健康の保持、穏やかで快適な時間の確保などが重視される時代になっています。
高性能なエアコン、断熱性の高い建物など、様々な技術開発、技術革新が進み、私達の快適な生活は守られています。
しかし、人に優しいだけでなく、地球環境にも優しいことが求められる時代です。
住まいにおいては、今のように様々な住宅技術が確立されていなかった頃の、自然と共存するような生活を振り返ってみることも必要かもしれません。
かつて日本人が暮らしていた民家などの様々な生活の知恵が「ロハス住宅」などの新しい言葉と共に、あらためて脚光を浴びています。

ロハス=Lifestyles Of Health And Sustainability の頭文字です。すなわち「健康的で持続性のあるライフスタイル」となり、暮らす人の心や体の健康、環境との共生などを考えながら住まうライフスタイルと理解されます。

伝統的な日本家屋に使われている材料

古来から日本家屋は地場の材料(土、木、紙、竹など)を活用して地元の職人がつくるということが基本でした。
かつての日本の住まいは、例えば通気性があり常に外の風が吹き込んでいたように、今よりも、自然を住まいの中に取り込み、自然と共存しながら、自然の力を借りながら、快適な生活を目指そうとしていたのです。
そのヒントを使われていた材料から見てみましょう。

土壁

今では住まいの壁はクロス張りなどが主流ですが、かつては土壁などが多く用いられていました。
現在の主流となっている高気密高断熱住宅には、吸放湿性に乏しい建築材料が多く使われています。
ところが、かつての日本家屋では、土壁(泥壁)、珪藻土(けいそうど)壁や砂壁など、自然の産物を取り入れていました。

■肌ざわりの柔らかさ、心地よさ
土は固まっても弾力があって感触がらかく、快適です。
特に高齢の方や小さな子供が転んでぶつかった場合など、クッション性があるので、安心です。

■吸音
柔らかい素材なので、歩く音や様々な振動音、室内の様々な音を吸収して、室内にも音を響かせません。

■保温
土のもつ無数の気孔により、多くの空気を含むことができるので、室内が暖かく外が寒い冬の時期には、室内の温かい空気を土壁が保持して、室内の温かさを保つ効果を持ちます。

■調湿
土は木材と同じように、多湿な時には余分な水分を吸収し、乾燥している時には蓄えた水分を放出する作用があります。

■空気浄化・癒し効果
湿気の調整に加え、家具や屋内に持ち込まれる工業製品から発散する揮発性化学物質(VOC)を吸収することで、人間の健康に役立ちます。
さらに、漆喰のマイナスイオンや檜のヒノキチオールなどには、癒し効果があります。
また、二酸化炭素を吸収し、空気を浄化する作用も持っています。

■耐火性
土が一定の時間、火炎の熱を伝えるのを防ぎ、その後は下地の木が炭化して、防火壁の役割を果たします。

■再利用
自然素材のみで構成されているので、何度でも再利用ができ、ゴミが出ません。

■地震への強さ
土壁は地震の時の耐震壁としても期待されています。

かつて、日本人の住まいには畳が必ず用いられていました。
和室で畳の上に座る生活は、玄関で靴を脱いで生活する日本人にとっては、何よりの癒し、安らぎにつながるものとして、当たり前に思われてきたものです。
しかし、最近のマンションや戸建住宅においても和室を設けないケースもあります。
床暖房、無垢のフローリングなど、板張りの床材の存在が畳に近づいてきたという事実はあるにせよ、日本人ならではの畳のよさをもう一度見直してみてもよいのではないでしょうか。

フローリングの上に敷く畳

欧米の文化を取り入れ、スタイリッシュな生活を求めるようになった日本人の嗜好に合わせて、海外様式にもマッチするようなスタイリッシュな畳も生まれています。
フローリングの上にカーペット感覚で畳を敷いて過ごすという新しい畳の使い方もみられます。
また、畳のふちがインテリアに合わないという声もあり、ふちのない畳も売り出されています。

イ草のいいところ

■足ざわりの柔らかさ、心地よさ
イ草の畳は弾力があって感触が柔らかく、快適です。特に高齢の方や小さな子供が転んだ場合など、クッション性があるので、畳の上であれば、大きなけがにはなりにくく安心です。
柔らかさは寝室として使う場合の背骨への影響も良いとされています。

■吸音
柔らかい素材なので、歩く音や様々な振動音、室内の様々な音を吸収して、階下の部屋にも響きません。
室内にも音を響かせません。

■保温
イ草の畳の表面に多数の気孔があり、イ草の繊維は多くの空気を含むことができるので、室内が暖かく外が寒い冬の時期には、室内の温かい空気を畳が保持して、室内の温かさを保つ効果を持ちます。

■断熱
夏にはイ草の畳はひんやりして、大変に心地よい感触があります。

■調湿
木材と同じように、多湿な時には余分な水分を吸収し、乾燥している時には蓄えた水分を放出する作用があります。
畳1枚で約500ccの水分を保持できると言われ、睡眠中の汗も吸い取れる効果が認められています。

■空気浄化
イ草の畳は二酸化炭素を吸収し、空気を浄化する作用を持っています。
この効果は畳が古くなっても、二酸化炭素吸収能力があると実験で証明されています。

■癒し効果
イ草には森林浴のような効果があります。さらに、イ草にはバニリンという物質が含まれていて、この成分が人間に癒し効果をもたらします。

■地震への強さ
土壁は地震の時の耐震壁としても期待されています。

イ草ではない畳

イ草は太陽の光により黄色く変色します。
それがかつては、数年に1度の畳の裏返しや打ち直しなど、住まいのメンテナンスとして当然のことと受け取られていたのですが、今の生活ではそのメンテナンスにかける労力、費用などが、畳が敬遠される大きな理由となっています。
また、住む人の健康などを重視するようになるにつれ、イ草が湿度の高い状態では、ダニの温床になりやすいことも、畳を敬遠する理由となりました。
カビやダニの発生を防止するためには、有機リン酸系などの防虫剤を塗布する必要があり、その防虫剤の化学成分がシックハウスなどを誘発することもあり、新しい畳として、かつてのイ草の畳が抱えていた「今の日本人の生活に合わない」とされる部分を改良した製品も開発されるようになりました。
新しい畳として、化学繊維(ポリプロピレン製など)の畳があります。
化学繊維なので、カビやダニが発生しにくく、防虫剤が不要になり、健康上の心配もありません。
様々な着色や織り方も可能で、水に強く、日常のお手入れも簡単です。
また、イ草の畳よりも長持ちすることも長所です。

伝統的な日本家屋の効能など

かつて、日本では住宅の数を必要とする気運が強く、住宅を効率的に量産できるハウスメーカーが中心となり規格化した住宅を提供しながら、日本の住宅供給を引っ張ってきました。
しかし、今の時代は、それぞれがどのような住まいを求めるのか、目的意識をはっきりと持って、こだわりを持って住まいを追求する時代になりました。
それぞれの人にとっての快適さを定義して、その求める快適さの中から、地域に根差した伝統的な日本家屋の要素を取り入れた住まいも選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
日本家屋の伝統と最新の技術の双方をうまく融合させて、新しい住まいの形を提案することも住まいの可能性を広げる一つの道でしょう。

“ひさし”の効能

ひさし(軒先)の長さが日本家屋の一つの特徴です。
ひさしが長く出ることにより、夏の高い太陽からの直射日光を遮ることができ、一方で冬の低くて長い太陽の日射しはしっかりと取り込むことができます。
また梅雨や台風など、雨に見舞われる季節も、ひさしがあることにより、窓を開けることができ、またサッシや外壁の損傷を防ぎます。
このようなひさし(軒先)なども、積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

“土間”の効能

日本家屋の特徴として大きな土間の存在があります。
玄関を広くすることで、近所の方などの訪問者が、家に上がるまではいかなくても、靴をぬがずに簡易な応接ができます。
家の中でも外でもない曖昧な位置づけの土間の存在は、かつては一つの隣近所の社交の場でした。
隣近所との交流を深めようと考えた住まいでは、広い土間を復活させるのも一つの有効な手段になるでしょう。

“家相”のこと

伝統的な日本家屋では、「家相」もかなり気にされてきました。
迷信のようなものを盲信するのはあまりのぞましくないのですが、家相の教えの中には、日本の特有の気候や風土を受け入れて上手に生活するための家の基礎的なルールとも考えられますので、参考にして住まいを考えてみるとよいでしょう。
家相によって間取りや方位を決めていくと、自然に陽当たり・風通しの良い家となるはずです。