大きな地震の後の対処

日本の住まいは、大きな地震の経験を教訓とし、建物の耐震性を高めた結果、倒壊等の大きな被害は少なくなっています。
住まいに大きな被害がなかったとしても、大きな地震の後には、日常の生活からは想像のできない現象がいくつも起こります。
住まいを守り、暮らしを守るために、大きな地震の後に何をなすべきかについて、確認しておきましょう。

地震の後の点検

地震による住まいの被害の状態を確認する際に、参考となる戸建て住宅の点検ポイントを紹介します。
点検して、異常や不具合が見つかった場合は、専門家に相談して詳しく調査をしてもらい、必要に応じて補修等を依頼してください。
マンションの共用部分に異常や不具合があった場合は、管理組合に報告し、専門家等による詳細な調査を行ってください。

戸建て住宅の点検ポイント

①建物周辺の土にぬかるんだところはありませんか?
雨が降ったわけでもないのに地面がぬかるんでいる場合、地中の給水管などが破損して水漏れを起こしている可能性があります。

②外壁の傾き、ひび割れやふくらみ等が生じていませんか?
構造体に損傷が生じている可能性があります。また、ひび割れ等から雨漏りが発生する可能性があります。

③外壁や基礎に大きなひび割れが複数入っていませんか?
建物が傾いてしまった可能性があります。

④室内の壁面に長いひび割れが複数ありませんか?
部分的に大きな力が働いた可能性があります。

⑤窓が動きづらくなったところはありませんか?
建物が変形すると、急に窓の開け閉めがしづらくなることがあります。 複数個所で開け閉めしづらいような場合は、建物が変形している可能性があります。

⑥床下が湿っぽくなっていませんか?
給水管や排水管の水漏れが原因かもしれません。給水管の水漏れは、給水の元栓を閉めます。排水管の水漏れは、漏れている管につながっている器具を使わないようにしましょう。

応急危険度判定

大地震の後は、お住まいの地域の自治体等により、地震により被災した建築物を調査し、その後に発生する余震などによる倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定することにより、人命にかかわる二次的災害を防止することを目的として応急危険度判定が行われます。
判定結果は、建築物の見やすい場所に表示され、居住者はもとより付近を通行する歩行者などに対してもその建築物の危険性について情報提供することとしています。
応急危険度判定ビラ:調査済
応急危険度判定ビラ:要注意
応急危険度判定ビラ:危険

震災後の電気・ガスの復旧

阪神・淡路大震災の時、ライフラインが復旧するまでの日数は、電気(7日) ・都市ガス(84日)・水道(90日)と、電気は比較的早く復旧すると言われています。地震の後で、電気と都市ガスについて何をすればよいのか、何に気をつければよいのかを確認してみましょう。

電気の復旧

地震の後で停電した場合は、落ち着いて復旧しましょう。

(1)自分の住まいだけが停電している場合

漏電遮断器または個々の安全ブレーカーが作動したことにより停電している可能性があります。
漏電遮断器・安全ブレーカーは、漏電による感電防止、漏電や電気の使いすぎなどによる事故を防ぐための安全装置です。
①漏電遮断機の役割
屋内配線、あるいは接続しているそれぞれの電気器具の絶縁状態が不良になると漏電が発生します。 屋内配線からの漏電、もしくは漏電している電気器具を使用すると、漏電遮断機が作動し、レバーが「切」側に落ちて、電気を遮断します。
この状態のままでは感電や火災につながるおそれがありますので、絶対に電気を使用し続けてはいけません。
②漏電遮断機の復旧
  • 住まいで使用している電源を全て切り、コンセントからプラグを抜きます。
  • 漏電遮断器が「切」側に落ちているのを確認し、落ちていない場合は「切」にします。
  • 全ての“安全ブレーカー”をすべて「切」にします。
  • 漏電遮断器の横にある漏電表示ボタン(白色あるいは黄色などのボタン)が飛び出しているので、押しこみます。
  • 漏電遮断器のレバーを上げて「入」に戻します。
  • 電気メーターを確認して、メーターが動いていないことを確認します。
    メーターが動いた場合には漏電している可能性があります。
    また、上げた漏電遮断器のレバーが再び「切」になる場合は、電気会社に連絡しましょう。
③安全ブレーカーの復旧
  • 漏電遮断器が「切」にならない場合は、安全ブレーカーを1箇所ずつ、「入」にします。
  • このときに、漏電遮断器が「切」にならなければ、その安全ブレーカーの屋内配線は漏電していません。
  • このときに、漏電遮断器が「切」になりましたら、その回路もしくはその回路に接続している電気器具が漏電しているおそれがあります。
    その場合は、その回路の安全ブレーカーのみ「切」にしておき電力会社や電気工事店に連絡してください。

(2)住まいの周り一帯が停電している場合

①復旧の時に漏電や発熱することがありますので、漏電遮断器を落とし、すべてのコンセントからプラグを抜きます。

②ガスの火を消し、元栓もあわせて閉めましょう。

③近隣の方と状況を確認し合い、代表の方から電力会社の電気設備 保守センターや地域の役所などに連絡しましょう。

ガスの復旧等

(1)ガスを使用している時に地震があったら

自分の身の安全を確保する。
  • ガスの火を消す。
  • 揺れがおさまったら、必ず「器具栓」、「ガス栓」、「メータガス栓」を閉める。
【火を消す】
メーターガス栓を閉めるイメージ
【メータガス栓を閉める】

(2)地震がおさまったら

  • 住まいの中でガス臭い時
    窓を開けて新鮮な空気を入れましょう。
    ガス漏れ箇所がわからない場合は、ガスメータのところにあるメインバルブを閉め、素早く家族全員で屋外に避難し、ガス事業者の緊急連絡先へ連絡しましょう。
  • 住まいの周辺でガス臭い時
    窓を開けないようにしましょう。
  • いずれの場合も、しばらくの間、右図にのようなことに注意しましょう。

(3)地震時の都市ガスの復旧

①マイコンメータによるガス供給の停止
  • 地震がおさまった後、周囲にガス臭などが無い場合には、ガス栓、器具栓、メーターガス栓を開いてガスが通っているかどうかを確認します。
  • ガスが出ないときは、マイコンメーターが作動して、ガスの供給が止まっている可能性があります。
  • 都市ガスは一定以上の震度(概ね震度5以上程度)の地震を感知した場合、安全のためにガスメーター(マイコンメーター)が作動してガスの供給を停止します。(この場合には“赤いランプが点滅”します。)

地震によりマイコンメータが働いて自動的にガスが遮断された場合、表示ランプが4~5秒毎に点滅します。

※マイコンメータの機種により点滅が若干異なります。

マイコンメータによるガス供給のイメージ
②一般型ガスメーターの復旧方法
  • 器具栓・ガス栓など全てのガス機器の栓が閉まっていることを再確認します。
    屋外に設置されているガス給湯器の栓が閉まっていることも忘れずに。
  • 復帰ボタンのキャップを外す(手で左に回す)
  • 復帰ボタンを止まるまでしっかり押し、表示ランプが点灯したら離します。手を離すと、表示ランプが点滅します。
  • 復帰ボタンのキャップを元通り取り付けます。
  • 3分待ちます。(マイコンメータが安全の確認中です。)
  • 表示ランプの点滅が消えたらガスが使用出来ます。
一般型ガスメーターの復旧方法のイメージ。メーターガス栓は開けたまま、復帰ボタンのキャップを外す。
一般型ガスメーターの復帰ボタンを止まるまでしっかり押し、表示ランプが点灯したら離します。

※3分以上表示ランプの点滅が続く場合は、ガス栓の閉め忘れがないかを再確認してから再度、①からやり直してください。それでも復帰しない場合は、ガス事業者へ連絡してください。

参考サイト

(4)ガスの供給が停止した場合の復旧

都市ガス供給業者のガスの復旧は、大規模な災害発生によりガスの供給を停止した地域について、すみやかな供給再開のために、供給停止を行った地域を細分化したブロックごとに契約者のお住まいを1戸ずつ巡回し、安全を確認しながら復旧作業を進めていきます。
  • 閉栓 契約者のお住まいのメーターガス栓を止めます。
  • 地域の分割 供給停止地域を、さらに細分化した「ブロック」に分割して復旧作業を進めます。
  • 漏えい検査 道路に埋設されているガス導管の検査を行います。
  • ガス導管修繕 道路に埋設されているガス導管の修理を行います。
  • 供給再開 二次災害を防止するために停止していたバルブ(ガバナ)を開け、ガス供給を再開します。
  • 設備点検 契約者の立ち会いの下でお客さま宅のガス設備の点検をします。
  • 開栓 お客さま宅のガスメーターを開けて、ガスを使用いただけるようにします。臨時供給 ガスの供給が再開するまで、病院等、社会的に重要な施設に都市ガスを臨時に供給します。
メーターガス栓を閉めるイメージ

参考サイト

関連動画サイト

(5)震災後のLPガスの復旧

①地震後の対応
  • ガスの漏れやガスのにおいがするときはガスの使用をやめて、器具栓、ガスメーター栓及び容器バルブ(LPガスのタンク)を全て閉めて、LPガス販売業者か緊急時連絡先に連絡してください。
  • 避難するときは、器具栓、ガスメーター栓及び容器バルブ(LPガスのタンク)を全て閉めてください。
    被害等に被害が発生した地域では、ガス漏れや容器等の点検を行いますので、ご協力をお願いします。
地震後のガス栓の対応イメージ:ガスの元栓を閉める、ガスメーターバルブを閉める、ガス容器バルブを閉める。
②ガスを再開する場合
  • ガス漏れやガスのにおいがしないか確認します。ガスのにおいがする場合は、器具栓、ガスメーター栓及び容器バルブ(LPガスのタンク)を全て閉めて、LPガス販売業者か緊急時連絡先に連絡してください。
  • ガス機器に損傷がないかを確認します。
    ガス機器等が損傷していた場合は、ガスを使用せずガス機器メーカー等へ 修理の依頼をしてください。
  • ガスが遮断された場合は、ガスメーターの表示を確認し復旧します。
    ガスの圧力が低下した場合や、大量漏洩による遮断表示がある場合は、LPガス販売店の点検を受けてください。
ガスメーター概要図
③ガスマイコンメーターの地震時の機能と表示
  • ガスを使用中に震度5相当の地震があった場合は、自動的にガスを遮断します。ガスを使用していない時は遮断しません。
  • ガス漏れや圧力の異常がある場合は、自動的にガスを遮断し、原因が表示されます。
ガス機器の液晶画面:震度5相当の地震が発生した場合

ガス使用中、震度5相当以上の地震が発生した場合。

ガス機器の液晶画面:長時間ガスを使用され続けた場合。

ガス器具の消し忘れなど、長時間ガスを使用され続けた場合。

ガス機器の液晶画面:大量のガスが流れた場合

ゴム管の外れなどにより、極めて多くのガスが流れた場合。

※ガス警報器とガスメーターが連携している場合、警報が鳴ったときも地震しゃ断と同じ表示になります。

④ガスマイコンメーターの復旧方法

ガスの圧力が低下した場合や、大量漏洩による遮断表示がある場合は、LPガス販売店の点検を受けてください。
地震による遮断表示が出ない場合は、LPガス販売店等の点検を受けてください。

ガスマイコンメーターの復旧イメージ:器具栓をすべて閉める
  • 器具栓をすべて閉めてください。
  • 使っていないガスの元栓が閉まっていることを確認してください。
ガスマイコンメーターの復旧イメージ:復帰ボタンを押す
  • 左側の復帰ボタンを押してください。
  • ガス止」の文字が消えます。
ガスマイコンメーターの復旧イメージ:液晶の文字とランプが点滅するので1分間待つ。
  • 液晶の文字とランプが点滅します。
  • 1分間お待ちください。

※ランプが復帰ボタン部にあるものもあります。

ガスマイコンメーターの復旧イメージ:復帰完了。
  • 液晶の文字とランプが消えます。
  • 復帰完了です。
  • ガスは使えます。

※復帰操作をしても復帰しない場合(再び「ガス止」表示が出る)は、復帰操作を繰り返さずLPガス販売店の点検を受けてください。

参考サイト

関連動画サイト

地震災害等の際、自治体から受けられる救助・支援

避難所で避難生活を送られている方、知人宅に避難されている方、自宅で避難又は車中で避難生活をしている方も、避難所で食料や飲料水の支援を受けられます。

※各種救助の手続きに必要な「罹災証明書」

「罹災証明書」は、大震災等の災害による住宅の被害の程度を証明する書類です。交付申請は各市町村の窓口です。申請すると市町村の職員が住宅の被害認定調査を行い、その結果に基づき「罹災証明書」が発行されます。
「罹災証明書」は、被災者生活再建支援金などの申請、税金の減免、各種融資など様々な申請に必要となります。詳細は最寄りの自治体にご確認ください。

参考サイト

住宅金融支援機構の災害復興融資

住宅金融支援機構では、災害からの復興を支援させていただくため、災害復興住宅融資の受付を行っています。(詳細は、「災害住宅融資のご案内」をご覧ください。)

参考サイト

参考図書

大きな地震の後の対処に関することは、住宅金融普及協会発行の「住まいの管理手帳」にも掲載されています。(戸建て編:p.34~36、マンション編:p.18)