このコーナーは、主として住宅や土地、都市問題を専門的にフォローされているジャーナリスト集団、日本不動産ジャーナリスト会議のご協力により、最近の様々なニュース、話題などをテーマに、自由闊達に論じていただいております。一部、最近の新聞や雑誌に掲載したものを筆者の要望で転用する場合があります。
(なお、ここに掲載している内容は筆者の個人的見解であり、当協会としての意見ではありません。)
建通新聞社 小澤和裕
三大都市圏や主要地方都市の地価動向を把握しようと、国土交通省が作成を始めた「地価LOOKレポート」。地価公示、都道府県地価調査に続く『第3の指標』として不動産業界でも注目している人は多いのではないだろうか。
「地価LOOKレポート」は国交省が四半期ごとに作成するもので、これまでに2007年10月1日〜08年1月1日分と、08年1月1日〜4月1日分と2回公表した。
作成の経緯は2年以上前にさかのぼる。値動きの速い都市部の地価動向を速報的に捉え、公表することの必要性はかねて省内で検討されてきたわけだが、07年1月1日時点の公示地価の調査過程で都心部の地価上昇がいよいよ周辺地域へ波及する傾向が鮮明になったことが、『第3の指標』作成の決め手となったようだ。
それからの対応は速い。07年度に予算化し、本格的に取り組みを開始し、07年第3四半期分からの実施にこぎつけた。
ところで、「第3の指標」作成は今回が初めての取り組みではないことはご存知の人も多いだろう。1992年度に当時の国土庁土地局が「短期地価動向調査」をスタートさせ、四半期ごとに地価動向を変動率で把握していた。東京圏は区部中心部など5地区を対象に短期的な地価動向を明らかにしようという取り組みだったが、この期間は住宅地、商業地ともに地価は総じて横ばい傾向から下落基調に入り、下げ止まらなくなった時期に当たり、「99年4月1日〜10月1日分」の公表を最後にやめてしまった。一方、今回始めた「地価LOOKレポート」は、先行的な地価動向を明らかにすることに主眼を置き、商業施設や高層マンション用途に開発が進む都市部の高度利用地区にポイントを絞り、その中でもプライスリーダーとなっている地点を抽出している。現在は不動産鑑定士88人体制で全国100地区の定点観測をしている。
東京圏は43地区を設けている。内訳は商業系29地区、住宅系14地区。商業系と住宅系の比率はおよそ2対1としている。4回目からは、東京圏都心部を中心に三大都市圏合計で30〜50地区を新たに観測地点に追加し、データの充実度を高める予定でいる。
また2回目の公表では、地価の上昇地点数が40カ所から20カ所へ半減、地価の下落基調が鮮明になったことから、3%刻みの変動率区分を5段階から6段階に、下落幅を追加する柔軟な対応をみせた。今後も地価の変動幅が拡大するようなら3%刻みで区分を設けるとしている。
さらに、地価を形成する要因として、現在は取引価格、取引利回り、取引件数、投資用不動産の供給、オフィス賃料、店舗賃料、マンション分譲価格、マンション賃料と八つある評価項目についても、より地価動向の実態を反映するような項目があれば追加する意向だ。
こうしてみると、国交省の『第3の指標』づくりに対する姿勢は「本気」のように見えるが、不動産取引業者など不動産業界の反応はどのようなものだろうか。
不動産価格を精査する際の公的な参考指標と言えば年に1回公表する地価公示。実際の取引事例には公示価格とかけ離れた価格で取引されるものもあり、直近の地価動向を把握しようとする場合には、関係者自らが市場のヒアリングを行い、情報収集に努めるわけで、四半期ごとに高度利用地の特徴が表れる「地価LOOKレポート」は、地価公示を補完する意味では参考になると、一定の評価をする声もある。
しかし、公表を始めた時期が遅きに失した感は否めない。米国のサブプライムローン問題に端を発するように、不動産リスクに対する投資家の懸念が顕在化し、景気の減速感から企業の土地投資意欲の減退懸念も聞こえており、地価が周辺部を含めて「上げ潮」基調の時であれば、注目度合いはもっと高まったはずだとの指摘もある。
また、調査対象地をピンポイントに捉えるデータではないため、そもそも参考に値しないと言う率直な意見もある。
次回、3回目となる08年4月1日〜7月1日分の「地価LOOKレポート」の公表は8月中旬の予定。6月14日には東京メトロ副都心線が開業し、池袋・新宿・渋谷の三大副都心の中心部や、新宿三丁目駅付近、明治通り沿いなどでは取引が活発で賃料も強含みに推移するなど「副都心線効果」が表れている。一方、東京圏の高度利用地であっても、取引成約件数の減少が続き、指値も厳しく、下落基調が鮮明になっている地区も増えており、先行き不透明感は深まるばかりで、変動率が注目される。
『第3の指標』公表は始まったばかり。今後、手間とコストをかけてデータを収集し分析する業務の必要性を、どう見出し、いつまで地価をLOOKし続けるのか。およそ7年間で終了した「短期地価動向調査」と言う前例があるだけに、公表の継続性にも注目したい。