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住まいの情報 ● 百・家・争・鳴

このコーナーでは、各界の有識者の方々による「住まい」に関する様々なご意見・ご提言等を紹介しています。(なお、ここに掲載している内容は筆者の個人的見解であり、当協会としての意見ではありません。)

沖縄の都市部に住まう

菅原律子

菅原律子設計事務所 +itiS 菅原律子

47都道府県の中で面積保有の順位は47番目の香川県を除き、46位の大阪府、45位の東京都に続き44番目が沖縄県です。東京都、大阪府が人口密度は1位2位と続きますが面積保有で全国44番目の沖縄県が人口密度は第9位の位置にあります。しかし、その実際は無人島を含む160の島々の合算面積であり、沖縄本島の18.4%を占める県民の居住出来ない米軍専用施設を含んだ面積カウントです。実感として、沖縄県内の都市部は東京都や大阪府に近い過密都市の様相が伺えます。

今、活気のある沖縄県内各地の都市部には人口増加に伴い大都市圏のマンションメーカーや戸建て木造住宅メーカーの建物が増えてきてこれまでにはないトラブルも多く発生していると、地元の建築関係者から聞いています。まして、観光立県として沖縄らしい自然や風景の保持を沖縄21世紀ビジョンとして掲げている沖縄県にあっては建築物の増加がそのまま沖縄の街並み作りに貢献するような建築を呼び掛けて欲しいと思います。

東京と沖縄から発信していきますが、今後沖縄県内に建築をお考えの方、特に沖縄本島都市部への小住宅など計画の時、かつての沖縄民家の良さを取り入れた都市型小住宅を建てることで沖縄らしい風景の一つになってみませんか。

沖縄都市部にかつての民家の良さを取り入れて---
都市部に建つ家/RC造+木造在来混構造2階建て、赤瓦葺き 地中熱エネルギー利用(GEOパワーシステム)※注参照

主要な都市部では敷地も狭く、戸建て住宅でも平家建てというのはなかなか難しいのでここではご夫婦、子供二人の4人家族共働き世帯を想定して混構造2階建てをプランしてみました。限られた敷地であっても沖縄のかつての民家らしく前庭(うなー)にヒンプンを配置した導入部をもうけますが、緩やかな階段を上りつつ向かうのはコミュニティスペースでもある2階の半戸外テラスのうなーです。陽当りや居住性の良い2階にLDを配し、個室やアメニティスペースは1階に配置しました。かつての民家の風情を街並みに提供しつつ都市部らしくモダンに住まうことを提案したいと思います。

 

これからの住まいは、どれだけエコロジーに暮らすか・・というテーマを抱えていくものと思いますが基本的にエネルギーの消費を抑える住宅設計プラス使用するエネルギーのいくらかは自分で作る、という自産自消を進めていきたいと考えます。年間を通じて冷房使用率の高い沖縄県ですが山口県秋吉台の鍾乳洞からヒントを得て開発した自然エネルギーを利用した換気システム(GEOパワーシステム)で盛夏でも涼しいゆるやかな風が住宅内を流れていくエコロジー住宅を提案したいと思います。残念なことに、盛夏でも海風がそよぐ沖縄県は涼しい!と言ってきたのが、最近の住宅事情では既に都市部内にヒートアイランド現象が出てきております。

亜熱帯の気候風土を活かし、南北の風の通り抜けプラス換気を設計しますが真夏の外気温と違い、温度変化の少ない地下5mの夏は涼しく冬暖かい地中熱を取り入れて空気を循環することで、換気をしながら室温の上昇を抑えます。このシステムは5mのアルミパイプ(地中熱パイプ)を地中に埋め込み、屋外や室内の暖まった空気と地中の冷えた空気が熱交換をし、地中パイプ内で花粉や外気のほこり、ハウスダスト等を取り除き、地中でクールダウンされた清浄な空気がまた室内に換気、循環されるというシステムです。空冷の冷房室外機のように外気に高温の熱風を出し続けなくて済みます。もちろん季節の良い時や窓を開放できる季節は自然換気を勧めますが、冷暖房の時期や空室がちの住戸など建物の維持保存にも良いようです。

ゆるやかにゆったりと空気を循環させるので盛夏の時など室内を急冷したい場合は一時的に補助用として空冷冷房を用いますが、案外沖縄の冬にこそこのシステムが生きてくると思います。年平均気温が23度の沖縄県では殆どの家に暖房がないのですが、1月から2月にかけて強い北風の吹く頃、地中熱エネルギーを利用したシステムで地中の温かい熱を取り入れられます。

都市部2階建て 南〜北 断面図:拡大図がご覧になれます。
都市部2階建て 南〜北 断面図(拡大図がご覧になれます。[PDF:1.25MB])

都市部の限られた敷地だからこそ前庭の意匠や屋敷林を多く植栽し、できるだけ屋根の赤瓦が目につくようなファサードデザインにします。沖縄らしい伝統的な赤瓦、屋敷導入部の琉球石灰岩のヒンプンや石畳にモダンなデザインの手すりをプラスして都市部らしいモダンな住まいが沖縄の風景に溶け込むように配慮します。

都市部2階建て 南立面図:拡大図がご覧になれます。
都市部2階建て 南立面図(拡大図がご覧になれます。[PDF:2.2MB])

海に沈む夕日がきれいな沖縄では、実は大空に反映する西日がとてもきれいな地域です。西日は遮るだけでなく外付けのガラリ戸を開閉してうまくLDに取り込めるように計画します。

都市部2階建て 西立面図:拡大図がご覧になれます。
都市部2階建て 西立面図(拡大図がご覧になれます。[PDF:1.15MB])

海岸沿いに建つ戸建てほどは北の寒風に備えなくても良いかとは思いますが、しかしできるだけ壁量を多く取り、冬の海を渡る強風に備えます。余裕があれば北側の植栽は有効です。

都市部2階建て 北立面図:拡大図がご覧になれます。
都市部2階建て 北立面図(拡大図がご覧になれます。[PDF:795KB])

赤瓦の街並みや琉球石灰岩を使ったアプローチにこんもりとしたガジュマルの木陰がある風情はほっとする沖縄らしい風景です。内部は現代生活に合わせたモダンなスタイルでも、郊外や都市部に沖縄の風景に溶け込むような民家デザインをご提案します。

都市型2階建てイメージ
都市型2階建てイメージ

郊外型平家建てイメージ
郊外型平家建てイメージ

※注(お問い合わせ先)

GEOパワーシステム会
[本部]754-0603 山口県美祢市秋芳町別府 2604-1
[関東本部]343-0825 埼玉県越谷市大成町 3-278

【すがわらりつこ】

沖縄生まれ。美大卒業後、商業空間〜住空間のデザイン設計を経て、平成10年一級建築士事務所ピトリ・ピコリから独立。
固定観念に囚われない「あなたの家」を一緒に考えていきます。

「家」は買うものではなく、楽しんで悩んで作っていくものだと思います。
構造強度や省エネルギー住宅設計に力を注ぎますが、“アート”や“色づかい”など人の暮らしにウィットや豊かさをプラスできる住宅デザインを目指しています。
東京〜沖縄で活動中。「itiS」という実験PROJECTでは、櫻庭紀之氏とユニットを組み「沖縄をはじめ、各地の風土を活かした家創りを研究しております。」
一級建築士・インテリアコーデイネーター

【公式Webサイト】
菅原律子設計事務所 +itiS